田中くん(愛犬)の散歩の途中、公園の前を通ろうとしたら彼らがいた。

俗に言う草食系男子ぽい平介と鈴木、佐藤そして平介の右手を握っている見慣れぬ小さな男の子が。

「平介の連れ子?」

「「「は?」」」

口を半開きにしながら唖然とした表情を浮かべた彼らを放置して、未だ平介の手を握る男の子の前にしゃがんだ。目線があえば、くりくりした目が私を捉える。

「ねぇねぇ、平介氏」

「なに?」

「この可愛い男の子、食べて良い?」

「ダメだよ」

「じゃあ、クッキー頂戴」

「んー明日じゃダメ?」

「うん」

「困ったなあー…どうしようかしら、ねぇ鈴木」

「俺に言われても知らねーよ。つかお前らのそのどうでもいいやり取り止めろ」

ぷりちーな男の子を見つめながら平介と変な会話をしていたら鈴木が止めに入った。ちっ邪魔すんじゃねぇと思ったのは内緒にしておこう。

「お名前、なんて言うの?」

「秋」

もじもじしながら自分の名前を言う秋くんに母性本能がくすぶられるというかーうん、たまんない。

「秋くんかあ、いい名前だね」

ありがとう、と頬を染め照れながらうつ向く秋くんを見て本当に食べてしまいたくなってしまった。

「なまえ、涎たれてる!」

「あ、いっけね」

佐藤に指摘されて慌てて拭うと、鈴木はきたねーなと嫌そうに言った。それにカチンときた私は迷わず鈴木の鳩尾に一発かます。

「ぐはっ」

「あぁあ…」

「!!」

「今の一発は、ひどい…」

と外野からの非難の声に、鈴木が悪いと子どもっぽくぶすっとすねてみる。(鈴木がお腹を押さえながらキモいと言ったが無視だ)しっかし、秋くんに怯えられたのは軽くショックだなあ。

「まあ、これで機嫌なおして下さいよ」

はい、と平介に手渡されたものを見て一気に気分が上昇した。

「ひやっほーい!平介のマフィンだー!」

「…大食い女」

私は減らず口の鈴木をギロリと睨み上げ、それからまた秋くんに視線を戻すと、秋くんの小さなお手手を両手で包み込み、

「秋くん、あんな大人になっちゃだめだよ?」

と、とっておきの笑顔でそう言った。

「おまえ!」

「けっ」

「〜っ!」

「落ち着けー!鈴木ぃ」

ぎゃーぎゃーと、暴れる鈴木を背後から止めるように羽交い締めをする佐藤。


「今日も賑やかだねえ」