時間も考えずに鳴り響く携帯を寝惚けながらなんとか探しだし、片手で開く。と、ディスプレイには腐れ縁の喧嘩仲間の名前。 ──こんな時間に嫌がらせか? 抗議をするべく通話ボタンを押して、携帯を耳に当てた。
「あー、坊っちゃん?もうちょっとさあ、時間ってもんを…」 「…あっん、フラン、っく、今すぐ来てっ」 「……?」
海の向こうにいる相手はこんな声だっただろうか。やけに甘ったるい女の声の合間に、熱を孕んだ息が吐かれていて、それで。
「…え、なまえ?」
電話の相手に気がついた瞬間、一気に意識が覚醒した。だって、電話をかけてきているのは坊っちゃんの携帯で、俺たちの共通の友人であるなまえは何かエロチックな状況なわけで。 混乱する俺には構わず、彼女が荒く息を吐く。
「ほしいの…来て、おねがいフラン、アートの家、だから」
電話先で、聞き慣れた声が「あいつが来るわけねえだろ」とせせら笑い、なまえが甘く喘いだ。 もしかして玩具突っ込んで放置とかしてんのかな。あのドS眉毛め。GJ。 心の中で腐れ縁の眉毛を思い出して手を合わせる。この間、菊に習ったばかりの日本式の感謝の仕方だ。
「わかった。でもその前に、そこのちんちくりんに代わってくれる?色々と聞きたいことあるからさ」 「ん…っアート、フランが、かわって、って…あっ、あ、あ、ぁあああっ!っはぁ、ぁん…あ、ぅ…」
あ、イったな。 下半身に直接くるような甘い声に口端が上がる。程なくして電話をかわった腐れ縁も、にやにやとした声音で話しはじめた。
「さっさと来いよ。なまえが俺たちにぐちゃぐちゃにして欲しいって誘ってきたんだから」
お望み通り、ぐちゃぐちゃにしてやろうぜ。 電話の先で悪どい笑みを浮かべているであろう腐れ縁に、俺がつくまで気絶させるなよ、と言いながら、ベルトを締めて車のキーを握りしめた。
─下準備は完璧─
2011.09.07 エロさが出ない不思議
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