目が覚めると、びっくりするくらいにいかつい男に、ギルベルトの女か、と聞かれた。 どうして私がギルちゃんの、と思ったけれど、多分、ちょくちょく一緒に買い物に行っているからだろう。
「私、幼馴染なんだけど」
にわかに男たちがざわつく。完全に私のことをギルちゃんの恋人だと思っていたらしい。信じられない。ふうぅ、深く長く息を吐く。 ちゃんと調べてから来なさいよね。 私の言葉に自棄になったのか、ボスと思われる男が携帯を取り出した。最新機種だ。いいなあ。
「この際幼馴染でも、」 「やめてくれはります?」
ボタンを押そうとした手が払われて、携帯が落ちる。それを、流れるような動作で汚れたスニーカーが踏んだ。 みしり。さらに液晶が軋む音がして、絶句する男の目の前で携帯を蹴り飛ばす。 新しい携帯なのにもったいない。無惨な姿になってしまった携帯を見送っていると、肩を抱かれた。
「こいつ、俺の女なんですわ」 「トーニョ…」
私、いつトーニョの女になったっけ。 小声で問う私にはかまわず、爽やかな笑顔を浮かべたトーニョが、携帯のショックから立ち直れていない男の前に立つ。 彼が移動したことでこちらから顔が見えなくなったので正確なことはわからないけれど、多分、恐い顔をしているのだろう。男が怯んだように後退りして、何かに躓き、尻餅をついた。その躓いて上にのった正体に気がついたようで、驚きよりも怯えに近い表情を浮かべている。
「尻の下に居るお仲間さんみたいになりとうないなら、こいつ、俺に返してもらえます?」
がくがく首を振る男に、次やったらこんなんじゃ済まされへんよ、と笑顔で念をおして、私の手を握って歩き出す。 聞きたいことや突っ込みたいことはたくさんあったけれど、今は感謝だけしておこうと握られた手を勢いよく振ってみせた。
─ダイナミック─
(怖かったやろ、ごめんなあ。ギルちゃんもフランも居らんし一人で頑張ろ思たんやけど、ちょい時間かかってしもた) (あれで時間かかってたとか、トーニョ何者なの)
2011.08.10 むちゃくちゃ喧嘩強そうだよねって話から
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