見上げた空はどんよりと曇っていた。とりあえずわかることは、親分と一緒にシエスタしていたときは、まだお天道様が出ていたし、雲の動きでは、今日の天気はずっと晴れのはずだから、ここはさっきまでいたところではない、ということだけ。
「よお、起きたか?」
顎を掴まれ、目を合わせるようにさせられる。ずいぶんと肌が白い男の人だ。親分よりも、少しだけ若いように見える。誰だろう。
「女に手ぇ出すなんて、ずいぶん卑怯なんやな」
相変わらずすぎて反吐が出るわ糞眉毛、と親分が言ったのが聞こえた(もしかしたら、知り合いなのかもしれない)が、それを鼻で笑って、白い人は縛られたままのわたしに顔を寄せてきた。きれいなペリドット色の瞳に見惚れそうになったけど、整った顔のその人をできるだけ睨みつける。ペリドットが細められた。
「はっ、可愛い顔してんじゃねえか、お前の女。…そうだ、こいつ、俺の奴隷にしてやるよ」 「誰、が、あんたなんかの…ッ!!」
ぱん、乾いた音が響いて頬に痛みが走る。涙を零さないように睨みつけると、底冷えするほどに冷たい瞳がわたしを見下ろしていた。
「あんた、じゃねえだろ?今から俺はお前のご主人様なんだ。…まあ、ご主人様と呼ぶのがどうしても嫌ってんなら、カークランド様でもアーサー様でも許してやる」
断ればこいつの命はないぜ? 男が親指で指した先には当然のように親分がいて。どうしようもない状況に、ぽろぽろと涙が落ちた。
─人生最悪の日─
(残念だったなカリエド、こいつは今から俺の奴隷だ)
2011.08.04 海賊眉毛
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