隣にいて当たり前






「男の人めちゃくちゃカッコいいのに、なにあの女ー」

あり得なーい。
通り過ぎる瞬間、きゃはは、と高い笑い声が聞こえて、思わず身を固めた。
似合ってないことは本人が一番わかっているのに、わざわざ言わなくたっていいじゃない。ていうか、まず、恋人じゃないし。
ぎこちない動きで少し離れようとした私の手を掴み、早歩きでそこを過ぎたギルベルトが、ああいう女は嫌いだ、と不機嫌丸出しの声で呟いた。短気な彼のことだが、ここまで不機嫌になるのは珍しい。

「なんで?ほんとのことだから仕方ないって」

ずきずきと胸が痛むのを感じながら笑ってみる。
やっぱり、友達としても、もっと美人な方がいいんじゃないだろうか。私みたいなのじゃなくて。

「あいつら、なまえの可愛いとこ知らねえからあんなこと言えんだよ」
「…なにそれ、もしかして慰めてくれてる?」

ありがとーお世辞でも嬉しい。
ひらりと手を降ってみせると、複雑そうな顔でクレープを頬張った。左手にはチョコバナナも持っているし、一体どれだけ食べる気なのだろう。
生クリームの甘さに顔をしかめたギルベルトが、ふと、思いついたように声を出した。

「そうだ、今度ああやって言われたら、うちの嫁が何かしましたか?って言ってやろうかな」
「えー、じゃあ私は、うちの旦那に何かご用でしょうか?って言えばいいの?」
「そうそう。で、最後には、お腹に子供いるんであまりストレスをかけさせないでやって下さい、って言ってやろうぜ」

どうだよ、絶対おもしれえだろ?
笑いながら差し出されたクレープにかぶりつく。生クリームが悪いのか、胸焼けしそうなほどに甘ったるいクレープだった。




─隣にいて当たり前─

(あっ、そういえば俺様カッコいいって言われた!)
(はは、聞いてたよー)
(ていうか女は俺ばっかり見てるみてえだけど、男が振り返ったりしてんのお前のせいじゃね?)
(ないないない!あんたの浴衣だよ!)




2011.08.01
ほぼ実話。今時の女の子こわいよ…男と女が歩けばすぐ恋人扱いしおって…

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