ベッドサイドの窓の外に見える鮮やかな赤の美しさを伝えたくて、もぞもぞと彼に擦り寄る。眠たげに目を開けた愛しい恋人であるアーサーは、寝起きの掠れた色っぽい声で、朝か、と呟いて、苦笑した。
「昨夜はがっつき過ぎたな、悪い」 「いいよ。いつもと違うアーティが見れて嬉しかったし、気持ちよかったから」
それより、窓の外見てみて。 朝霧できらめく彼ご自慢の薔薇園を指さす。最近では珍しく太陽も出ていて、きらきらとドロップのような甘い輝きを放っている。
「薔薇か」 「うん、きれいだなって思って。アーティいっつもいじってるよね?」
夜になると私をわけがわからなくなるくらいまで感じさせる白い指が、薔薇の棘や刺繍針で傷だらけなのを私は知っている。
「お前ほどじゃないが結構弄ってるからな」 「私が一番なの?」 「当然だろ」
って、何言わせんだバカ。 こつん、額を小突かれて、くすくすと笑い合う。笑っているうちに雰囲気が変わった彼の顔が近づいてきて、唇が触れ、粘膜の間をぬるりと熱いものが入ってくると同時に、私も彼の身体に脚を絡ませ、休日の朝にはいつもそうするように腰を揺らしてみせた。
「すき、アーティ」 「ん、俺も」
こうして、私は覆い被さる恋人の香りに酔いしれて、いつものように甘い休日を謳歌したのであった。
─甘美なしらべ─
2011.08.01
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