とおい昔の






何や、昔の夢か。
幼いころ4人でよく遊んでいた公園で、小さい子供が二人で何かを話している。一人はブランコを漕ぎながら、もう一人はブランコに座ったままで。どこの記憶かはわからないが、見覚えのある光景だ。
あれ、なまえと俺や。何で二人しかおらんのやろ。

「おれな、お前のことめっちゃすきやねんでっ!」

小さい俺が、びょん、とブランコから飛び下りてなまえの手をとる。
この方角から顔は見えないけれど、多分、満面の笑みのなまえが俺の手を握り返したようだ。

「あたしもトーニョすき!せかいで一ばんだいすきだよ!」
「んと、んと、大きいなったら、けっこんしよな!」

これ、けっこんゆびわ!
ポケットから小さなビーズがついた指輪を出して、なまえの指にはめて。誓いのキスのつもりなのか、子供らしい触れるだけのキスをしている。
あんなことしとったんか、俺。
夢なのか本当にあったことなのかわからないくらいに細々とした設定や光景に半ば感心しながら、夢が覚めそうな感覚になまえの前まで動いてみる(俺が動いてみても何も変化がなくて、今まで何かあると思って動いていなかったことを心底後悔した)。

「トーニョ、やくそくだよ!」

明るい声がした方向を見ると、昔から変わらない笑顔が惜しみなく咲いていた。




─とおい昔の─

(夢、にしては、やけにはっきりしとったなあ…)
(結婚…か)



2011.08.01
これに続きます

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