なあなまえ、俺と結婚したってや。 窓の外を眺めているなまえの髪が靡く。少し経って、気がついたよう振り返り、どうしたの、と首を傾げた。
「トーニョ、結婚願望なんてあった?ていうか、付き合ってもいないのに結婚って、すっ飛ばしすぎでしょ」
なまえは、いつもと同じ4人で過ごしているときの顔で、寂しそうに笑った。 結婚とか恋人とか考えたことなかったし、ずっと、このままでいれると思ってたよ、私。 夕方の涼しい風が、どこかの夕飯の匂いを乗せて室内に入ってくる。
「俺な、こないだ夢見てん」 「うん?」
急な話の展開に、きょとんとしたなまえがこっちに目を向ける。夢の内容をよく思い出そうとする俺の視線の先で、木の葉が揺れた。風が冷たい。
「小さい頃の夢でな、なまえにちっちゃい指輪渡して、結婚しよう言うて」 「あー、だから結婚しようとか言ったの?」
だめじゃん、そういうの本気で好きな人に言わなきゃさ。 ぱたん、なまえが冷たい風に体を震わせて、窓を閉めた。途端に静かになった室内の空気の重さに、気まずさが募る。 誰もなまえのこと好きやないなんて言うてないやんか。 胸の中のもやもやを押し出すようにゆっくり息を吐いた。
「……キスしてええ?」 「え、なんでここで…っちょ、トーニョ、」
心底信じられないというような顔をしているなまえの唇を啄む。柔らかい。
「…っあんたねえ!!」 「あだっ!?」 「何急に自分だけプロポーズしてキスするわけ!?そんなんよりもっと先にすることがあるでしょうよ!」
鬼のような形相ってこういうのを言うんかな。 殴られた頭頂部を撫でながら思っていると、胸ぐらを掴まれた。さっきまで狼狽えてキスされていたなまえの恐ろしい程の変わり様に、今度はこちらが狼狽える側になった。
─勘弁してくれ─
(告白を先にしなさいよ!) (えー、したやんか) (いつ!) (夢の中で)
2011.07.29
ごめんなさい、関西弁ちんぷんかんぷんです。でも親分大好きです
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