「今日は俺の誕生日だぞ!」
昼休み。高らかと誕生日宣言をする彼に、はいはい、と適当に返事をしながら、私の頭は忙しく働いていた。 恋人同士になってからも、話題になることなんてなかったから、今の今まで誕生日なんて知らなかった。しかも、当日になって言うなんて。頭の中どうなってるんだろう。もっと早くに知っていればプレゼントを用意したものを、この男は本当に女心がわかっていない。 正直に言うと、彼が何を欲しがっているか、ということもわからない。ハンバーガー…は、さすがにだめだろうから、ええと、何にしよう。思いつかない。
「…欲しいものある?」 「君」 「却下」
ちょっとくらい迷ってくれてもいいじゃないか!! 彼のブーイングを無視しつつ、思考を巡らせる。 私が欲しい、か。どういう意味なんだろう。 私たちだって年頃の男女だし、何より恋人同士だ。様々な意味がある。 しょんぼりと項垂れている彼の腕をつつくと、一気に明るい表情になって振り向いてきた。顔が近くて、少しだけ緊張する。
「…あの」 「なんだい?」
ぐぐ、と顔が寄ってきた。近い。近すぎる。 耐えられずに顔を背けて質問を口にする。小さい舌打ちが聞こえたが、気にしない。
「私が欲しい、って?どういうこと?」 「えっ、わからないのかい?」
こういうことなんだけど。 唇同士が触れるのを間一髪でかわす。が、寄りかかっていた壁に手をつけられて逃げられない。 どうしようかと考えているうちに、彼の手はスカートに入り込もうとしている。こんなところで、こんな状況で初めての行為に及ぶなんて勘弁してほしい。潤んだ視界に彼を入れて、名前を呼ぶ。これでやめてくれなかったら蹴ってやろう。
「…アル」 「!!」
弾かれたように顔を上げた彼の頭にチョップを食らわせて、どうにかこうにか手の侵入を阻んで。本日二度目のブーイングをまたもや無視しながら、目尻に涙を溜めて見上げる。ごく、彼が唾を呑んだのが聞こえた。もう一押しだ。
「…はじめては、アルの家でしたいんだけど」 「そうだね。…わかったよ」
なんだ、話せばわかるんじゃん。慣れないことをしたせいか、治まらない顔の熱にぱたぱたと風を送っていると、突然立たされて、腕を引かれた。荷物…は、持っていてくれている。って、まさか。
「ねえ、ちょっと」 「ん?」 「どこ行く気?」 「え、なまえは俺の家に行きたいんだろう?だから、早退しようと思ってね!」
なんてこった。彼が人の話を聞かない人間であるということは前々からわかっていたというのに。 早足で歩く彼の後ろをとぼとぼと歩きながら、どうにか行為に及ばなくてもいいようになる方法を探そうと、数少ない友人たちにヘルプメールを送った。
―へるぷみー!― 返事のほとんどが「諦めろ」だなんて私は信じない。
2011.07.05 めり誕。つづきとして裏も書くべきか。
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