恋味飴


これとかこれの続編っぽい




ミルク味のキャンディを口の中で転がしながら、フェンスに寄りかかる。苦い胸中とは裏腹に、口の中はやたらと甘ったるい。更に空も嫌味なくらいに晴れていて、世の中自分の心と同じようには動かないものだな、とどうでもいいことが頭に浮かんだ。こんなことでも考えていないと、やってられない。
昨日、いつもと同じようにあの場所に座っていて、とうとう、聞かれてしまったのだ。「君は結局、俺のことをどう思ってるんだい」と。
何ヶ月も返事をしないどころか最近は彼を避けつつある私に気がついていたのか、思いつめたような顔をしていて。悲しげな声だけがずっと耳に残っていた。
それで、今日は少しだけ外の空気に当たって考え事をしている。のだけれど、なにも思い浮かばない。どうするべきなのか、わからない。
大分小さくなったキャンディを噛み砕く。喉が渇いてきた。

「…今日はアセロラドリンクにしようかな」

そういえば、彼が来るようになったからかはわからないけれど、独り言が増えた。いるときはいつでも、何かを言えば反応してくれていたから。楽しそうに話しかけてくる彼を見ると、なんとなく嬉しかったから。
これが好き、ということなのだろうか。
悩む気持ちを乗せて深いため息を吐く。

「ため息つくと幸せが逃げるんだぞ」
「!…今日は早いね。珍しい」
「君も、珍しいね」

外に出てるなんて。日焼けしたくないって言ってただろ?
ちょっぴりよそよそしい彼もフェンスに寄りかかったせいで、錆びてきているそれが嫌な音を立てた。

「…昨日の返事、聞きにきたんだ」
「…うん、わかってる」

ひとつ、息を吐いて。顔を上げる。不安げな青い瞳に、同じく不安そうな私の顔が映っている。

「す…き、」
「…え?」
「多分、私も、あ、アルフレッド、が」

あ、初めて名前呼んだ、かも。
気がついてぽつりと呟いた私の目の前で、かああ、と耳まで赤くする彼にあわせて、こちらの顔も熱くなる。
なに、この雰囲気。ベタな少女漫画みたいな展開に、どうしようもない恥ずかしさとどきどきが募る。

「じ、じゃあ、さ!!!」

やけに大きな声を出して肩を掴んだ彼が、真剣で、でも泣き出しそうな表情で私の顔を見つめる。
あ、この光景、前に、どこかで。
どこだったかな。それを考える暇もなく、互いの距離は徐々に縮まり、唇が何者かにふさがれる感覚がした。




─恋味飴─

(…い、まの…っ!)
(恋人になって最初のキスだぞ!)



2011.06.26

とりあえず終わり。
恋味飴と書いてラブテイストキャンディと読みます。読んでください。




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