迷って歩いているうちに違う道に入ってしまったのか、知らない景色に出た。きらきらと光る水面とやわらかい木漏れ日に、道に迷っていたことも忘れて目を細める。 ──こんな場所があったのか。 女神がいてもおかしくないような景色だ、非現実的なことを考えながら湖に手を入れる。水浴びでもするのに丁度よさそうな温度だ。
「……誰だ、あんた。どうやってここに来た」 「!!!」
明らかな殺意をこめた声に反射的に銃を向け、そちらを向いて、後悔した。 湖にいたからこそこちらに気がついたのだろうが、まさか相手が裸だと誰が想像するだろうか。 とっさに目を逸らしたこちらに、訝しげな表情をしながら近づいてくる。白い肌がまぶしい。できることなら何か身につけてもらいたいところだが、初対面の女に貸すことができるようなものは持っていない。
「あんた…ひとの質問に答えることもできないのか?」 「……道に迷っていたんだ」
ふうん、興味のなさそうな返事と同時に解放されて、ほっと息をつく。何者であるかということは興味があるが、何より相手は女性だ。全くと言っていいほどに耐性がない上に相手は裸であるのに、どうやってそんなことを聞けようか。 悶々とする頭でそんなことを考えながら水面を見つめていると、目の前に悩みの種である女の顔があって。
「なっ、んだ」 「道に迷ったんだろう?教えてあげるよ。あんたが今来たところを真っ直ぐ引き返すと、ほかよりも大きな木がある。そこから見回して、白い花がたくさん咲いている方角に歩くんだ」
そうしたら、迷い始めた場所に戻れるよ。 やけに詳しい説明に、よくわからないまま頷き、方向転換する。 もう迷わないようにしな。先ほどとは打って変わって優しい響きを含んだ言葉に、小さく感謝の言葉を返して歩き出す。 皆にはこの場所を教えたくないものだ、と思いながらなんとなく振り返ると、光が漏れていた場所は魔法でもかけたかのようになくなっていた。
─美しい別名─
(お前、もしかしてフレイヤと会ったのか!?) (フレイヤ?俺は女神と会った記憶はないが) (いや、それは別名で…なまえといった方が正しいな。それにしても、あいつのところにいけるなんてな…) (?もっとわかりやすく言ってくれ。それと幻覚の話もしないでくれ、俺にはそういうものが見えないんでな)
2011.06.03
サンホラ聞きながら打ってたらこうなった。神話全然知らないので、とりあえず覚えている名前出したんだけど、愛の女神であってる…よね…?
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