「うわ、おま、何て格好…!」 「あー、おはよーギル」
あたしの服知らない? ノックもせずに人の部屋に入ってきておいて、真っ赤になって出て行った恋人(きっとドアの向こうで一人で焦っているのだろう)に問いかける。 昨夜、やたらと興奮した彼に獣のように激しく抱かれたせいで、着ていた服がみつからないのだ。 とりあえず何か身につけておこう、と思って置きっぱなしにしていたベビードールを着たものの、朝の冷えた室温でこの格好をずっとしているというのはきついものがある。 ダメ元で、もう一度、ドアの向こうに向かって話しかけてみる。このままでは帰れない。
「ねー、寒いんだけどー」 「…おう」 「いや、おう、じゃなくてさ…あたしの服はー?」
風邪ひいちゃう、そう付け足すと、いじけたような声がやっと返事を返してくれた。
「……洗濯してる」 「は?なんで?」 「…汚しちまったからに決まってんだろ」
ほぼ逆ギレに近い返答に、昨夜の情事を思い出してみる。 次の日が休みだから、久しぶりにお家デートでもしようということでギルベルトの家に行った、のが昼過ぎ。それから恋人同士らしくいちゃいちゃするわけでもなく、とりとめもない話をして。夕飯を準備して、食べて、片付けて。 そうだ、のんびり映画を見ていたら急にソファに押し倒されたんだった。
「あのとき、服にかかったの?」 「………悪い」
でも他の女で抜くっつーのも気引けんだろ、だから溜まってて。 慌てて理由を説明する彼に、ストップ、と声をかける。 ドア越しの今なら、言えるかもしれない。
「あの、あたしも気持ちよかったから、いいよ。謝らなくて」 「マジか!!」
寄っ掛かっていたドアが引かれて、後ろに倒れかけた私をうまく受け止めたギルベルトの目が、子供のような嬉しそうなものから男の欲情したものになるまで、そう時間はかからなかった。
─白から黒に変わる瞬間─
(これなら、いくら汚してもいいから、いっぱいしていいよ) (言われなくてもするつもりだっつーの)
2011.05.28
普段は純粋っぽいのに、セックスのときは意地悪になったりするぷーが好きです。
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