私は今、とんでもない危機に見舞われている。 多分、いつだったかアントーニョがシェリー酒を勧めていたことを思い出して頼んだのが始まりだと思う。 右に座っていたギルベルトはよほど驚いたのか頼んだ瞬間に勢いよくこちらを向いて酒をこぼし、左側のフランシスは先ほどから酒をあまり口にしなくなり、カウンターの先でカクテルを作ってくれていたアントーニョは急激に口数が少なくなった。 何だろう。3人共、シェリー酒に嫌な思い出でもあるのだろうか。 悪いことをしたかな、酒のせいで回らない頭でどうにかそこまでこぎつけ、謝ろうとした瞬間、左手が握られた。フランシスだ。
「なまえさ…本気?」 「え…え?何が?」
何のことを言っているのか全く理解できないまま、顎を上げられ、妙な雰囲気のフランシスの顔が近づいてくる。 ──キスされる…!? しかし唇と唇が触れ合うことはなく、反対側から肩を掴まれて後ろに引かれた。痛い痛い落ちる。 力が強くて危うく椅子から落ちそうになったが、あっちはそんなことは気にならないらしい。 もう少し気をつかってくれてもいいんじゃないの。私女の子だよ。
「こっ、こいつは俺様の女なんだよ!」 「……え?」
みなさんが誤解しないように説明しておくと、私は彼、ギルベルトとそんな関係になった記憶はない。 何なんだ、と頭突きをかましてアントーニョに助けを求めると、何とも意外な答えが返ってきた。
─自業自得─
(俺んち、男女の席でシェリー酒飲んだら今日は抱いてもええでって意味になんねん) (!!!) (早く準備して帰りや。俺が適当に誤魔化しとくわ)
2011.05.15
途中で飽きたなんて言えない。
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