ぶわり、風にのって淡いピンクの花びらが舞い上がった。その中の一つに手を伸ばしながら、なまえが俺に問いかける。
「あのさ、桜のジンクス、知ってる？」
まあ、こんなことができる人なんてなかなかいないと思うんだけどさ。
掴むどころか、触れることもできずに落ちてしまった花びらに苦笑いを浮かべて付け足す。
そんな彼女の後ろで、風が桜を舞い上げているのが見えた。ひらひらとこちらに向かってきたそれを掴んで、手を開いてみせる。案外簡単にできるものだ。
「で、桜の花びらが地面に落ちる前に掴むと、恋が叶うんだって」
「…じゃあ、俺の恋も叶っちゃうのかな」
間の抜けた声を出して振り返ったなまえの唇に花びらを押し付け、目を細める。
驚いてる。かわいい。
囁いただけで一気に赤くなった彼女の頬に触れ、顔を近づけて。
「ねえなまえ、この恋、叶えてよ」
俺の恋人になって？
ちゅ、触れるだけのキスをしてみるが、反応がない。
どうかしたのかと声をかけると、やっと言葉の意味を理解したらしい彼女が鞄を落として口をぱくぱくさせていた。
─それは仕組まれた恋─
(こいっ…！？)
(俺じゃだめなの？)
(だ、だめじゃない！)
2011.05.12
先生、イタリア男が本気を出してくれません
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