「なー、最近なまえおかしない?」 「はあ?何言ってんだお前」
なまえがおかしいのなんて昔からだろ。 そう言ってゲラゲラと笑うギルベルトにグーパンを食らわせて俺を見てきたアントーニョに、冷や汗だらだらで笑顔を返す。 ──アントーニョって何で酔うと歯止めきかなくなるの…お兄さんもう帰りたい。 昔やんちゃしまくっていた友人からの容赦ない攻撃に一発で沈んでしまった不憫な友人に、心の中で十字を切って、話題を元に戻す。 なんだっけ、なまえが変って話だったか
「で、具体的にどんな風に変なわけ?」 「…なんか最近むっちゃ目合うねん。あと眉毛野郎がなまえと喋っとんのがごっつ腹立つ。眉毛抜きたいわ」
今度会うたら抜いて来いや。 酒のせいか、いつもよりも黒さが目立つアントーニョの発言を、ゆっくり反芻する。 何度考えても、ただの嫉妬のようにしか聞こえない。
「…アントーニョさあ、もしかしてなまえのこと好きなんじゃないの」 「そうなるんかなー俺なまえのこと大事やもんなー…」
テーブルに突っ伏したアントーニョの肘がコップに当たって、限りなく水に近くなった酒がテーブルにこぼれた。 ──ここまで酔ってるの久しぶりに見たなあ。そんなに悩んでたのかね。
「あのさトーニョ、聞いてないなら聞いてないでいいんだけど」
動かない。本格的に寝てしまったのかもしれない。 それでも、とりあえず相談してくれた友人のために、聞いている間ずっと思っていたことを口に出してみた。
「お前さ、それ、多分あいつに」
─惚れてるんだと思うよ─
(本人たちは、鈍感だから自分の気持ちにも気づいてないみたいだけど)
2011.05.02
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