帰る場所






「アル、もう帰った方がいいわ」

アーサーが心配してる。
ソファに座ってテレビを見ていたアルフレッドが、義理の兄の名前を出されて露骨に表情を歪めた。
なにも考えずに飛び出してきたのだろうか、制服に部活のバックというどこからどう見ても部活帰りにしか見えない格好でここに来た少年の隣に腰を下ろす。
大方、もう高校生になったというのに過保護な義兄と喧嘩になって出てきたのだろう。
更にはその義兄も不器用なもので、人を罵倒したり皮肉を言ったりすることは得意なくせに、愛情表現という類のことがめっきり苦手なのだ。
親しい友人である、その義兄、アーサー・カークランドの姿を思い出して苦笑が漏れた。

「過保護なのも考えものね…」
「!なまえもそう思うだろう?アーサーは過保護すぎるんだ」

俺はもう子供じゃないのに。
口を尖らせてクッションを叩くアルフレッドをなだめて、髪の毛を撫でる。昔から変わらず可愛い弟分は、不満そうに手を払った。

「なまえだって子供扱いしてるじゃないか!」
「………」

子供だから仕方ないじゃない。そう言ってしまうとまたいじけかねないので、黙ったままソファから立ち、引き出しを開けた。
小袋を手に持って、中身を確かめる。よかった、やっぱりこの中だったんだ。

「はい」

これあげる。
今では少し古いデザインの小袋の中から銀色のそれを取り出して、アルフレッドの手にのせ、理解できずにぽかんとしている弟分の髪をぐしゃぐしゃと乱す。
義兄に似て、鈍感な子だ。

「あげるって言ってんの。何かあったらいつでもうちにおいで」
「…いいのかい?」
「だから今日は帰りな。送ってあげる」
「ああ!ありがとうなまえ!」

満面の笑みで礼を言われて、こちらも笑顔を返す。
かくして、私は怒ったり喜んだりと忙しい愛しい弟分を家に帰すことに成功したのであった。




―帰る場所―

(アーサー、アルにうちの合鍵渡しといたから)
(何考えてんだよお前!)
(仕事でいない時に来て外で待つなんてかわいそうでしょ?)



HIROだけ高校生設定。

2011.04.23

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