「なまえ!好きだ!結婚しよう!」 「はいはい」
今日もごくろーさん。 いつものように、昼休みが終わって授業が始まったにも関わらず屋上へ続く階段に座る私(決してサボりではない。むしろ教室にいる時間の方が少ないくらいだ)の目の前で何度目かの告白をする彼を見上げる。 毎日毎日こんなところに来て、飽きないのだろうか。 何ていったって彼は、ぶらぶらと歩いていたらしい時に偶然出会って以来、昼休みになると毎日ここに来るのだ。 教室に居場所がなく、さらには特別に仲が良い友達もいない、という所謂「ぼっち」の私のところに来るなんて、彼くらいで。 正直、初対面で告白されたときは、何かの罰ゲームかと思ったけれど。 今は、少しだけ、彼が来てくれて嬉しいと思うようになっている。
「こんな薄暗いところにいたら、気分も沈んじゃうだろ?」 「んー」 「教室、行かないのかい?」 「んー…」
まあ、俺はなまえと2人きりでいられるからいいんだけどね。 楽しそうにそう言ってどかりと隣に座ってくる彼に、狭い、と苦情を言ってみる。 もしかしてまた太ったんじゃないの、この人。
「いいじゃないか、俺がこうやってくっついていたいんだ」
変なの。小声で返すと、また楽しそうに笑った。何が楽しいんだろう。 ずず、オレンジジュースを吸い込む。話しているうちに時間が経ってぬるくなってしまった。
「そういえばさ」 「…うん?」 「あんた、生徒会らしいけど、もしかして担任にでも頼まれてここ来てんの?」
驚いたような、ショックを受けたような、そんな表情がこちらを見た。 変なこと言ったかな。でも、そう考えるのが普通じゃない。 長い沈黙の後、大きな手に両肩を掴まれる。
「俺は確かに生徒会だけど、それで君と一緒にいるわけじゃない。君の傍にいたいから来てるんだ」
わかったかい? 泣き出しそうな、それでいて真剣な顔。彼も誰かのためにこんな顔するんだ。 誰のため?…私のため、だろうか。 肩を掴む手の震えを感じて、鼻の奥が痛くなった。
─シンプルでストレートな感情─ 俺は君が好きなんだ、だから寂しい思いはしてほしくない
(なんで、そんなに真っ直ぐな目で見れるんだろう) (どうして、私はこんなに嬉しくて切ないんだろう)
HIROのまっすぐさがうらやましいな、と
2011.04.17
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