これの後の二人の話
「…ありがと、助かった。だってほら、あたし、迷惑かけちゃってたじゃん?ほんとありがとアーサー」
ぺらぺらと喋り続けるなまえの腕をもう一度掴んで一歩歩み寄ると、後ずさるなまえ。 正直に言えば、腹が立っていた。 ずっと傍にいたのに、どうして俺に相談でも何でもしなかったのか。他人の色恋事には興味ないって思ってんのか。正にその通りだよばかぁ。 悶々とする気持ちを抑えられないまま、壁に押し付ける。 はたから見れば危ない光景かもしれないが、そんなの知ったことか。あんな野郎と噂になって退学処置をとられるより、俺と噂になった方がまだ安全だ。
「…顔、こわいよ?」 「何で俺じゃないんだよ」
は?と目を丸くしたなまえに、慌てて、いやそういうことじゃなくて、と付け足すと、楽しそうに笑い出して。 ――今日はなんだか調子狂うな。 眉間にできていたらしい皺をつつきながら、なまえがにっこりと笑う。
「大切な幼馴染にそんな相談できないでしょ」 「…………」 「アーサー?どうしたの、黙って」 「…いや」
そうか、幼馴染か。 ちくちくと胸が痛む。おかしい、こいつに幼馴染と言われて傷つく要素なんてないだろ。
「…はい、じゃあ解放して」 「あ、ああ、悪い」
昔のアーサーに戻ったかと思ってびっくりしちゃったよ。 無邪気に笑うなまえが何だか遠い。 痛んだ辺りに触れてみても、何も刺さっていなかった。
(…むしゃくしゃするからフランシスでも殴りに行くか) (久しぶりになまえも連れて…って、あいつの予定も聞かねえと)
2011.04.08
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