「フェリシアーノ!」 「どうしたのー?」
突然かけられた声に振り返ると、息を切らして走ってくる女の子。 いつもの俺なら、すぐにハグしに行ったけど、今日だけはできなかった。 だって、泣いていたから。
「なまえ…っ?」 「ロヴィーノが、ね…!」
ざくっ、と胸が抉られたような感覚がした。 彼女の口から男の名前が出るだなんて予測できなかったし。 何より、それが自分ではなく兄であることが、悔しかった。
「兄ちゃん、が」
どうかしたの。 声が震える。 自分が話をする女の子はたくさんいて、たとえその子が兄の名前を呼んでも何とも思わないのに。 彼女のこれは、どうしてこんなに痛いのだろう。
「…フェリシアーノ?」 「なーに?」
痛い。 どういう目をして、彼女を見てあげればいいのかわからない。 頭の中を、ぐるぐると色々な考えが渦巻いて。 おかしくなりそうだ、と思った。
「なまえ、は…」
俺より、兄ちゃんの方が好き? そう問えば、フェリシアーノは好きだけどロヴィーノは愛してる、と小さく返されて。 どうしたらいいのか、わからなくなった。
─相談なんかしないで、と─
(俺はずっと、) (なまえが好きだったのに) (他の女の子よりも、ずっと、ずっと)
2009.11.16 修正
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