「好きなの、先生」 「…え?」
それまですらすらと動いていた思考回路が、ぴたりと止まる。 自分よりも頭一つは小さな相手は、今にも泣き出しそうな顔で。 学生時代に「生徒に告白されたりしてな!」とからかってきていた友人の言葉を思い出して、心の中でぼやく。 ――現実になってまったわ… 確かに講師と生徒であれば年齢も近い。大学院生と高校生なんて6歳か7歳ほどしか変わらないだろうけど。
「ええ、と、俺、教師やん?そういうの、やばいんとちゃう?」 「わ、かってるけど、」
好きになっちゃったんだもん。 ぼろぼろと大粒の涙を流す彼女に、どうしていいかわからずハンカチを差し出す。 が、ものすごい勢いで払われて。
「っ優しくしないでよ!」
なんやねんお前。払われて床に落ちていったハンカチの声が聞こえた気がした。 ――…全然理解できひん。泣き続ける生徒の慰め方なんてやっとらんし…どないしよ 困り果てていると、丁度よく通った(見回りでもしていたのだろう)生徒会長が彼女の目の前にしゃがみ込み、ぐいと腕を引いて。
「なまえ。今日、二人で見回りするっつってただろ」 「…?……うん」
じゃあなカリエド。 勝ち誇った笑みを浮かべて立ち去っていく生徒会長と、それについて行く彼女をぼんやりと見送って。 どこか釈然としない気持ちに、首を傾げていた。
(なんやねんあの顔。意味わからんわ) (むっちゃモヤモヤするし、何やろ)
2011.04.08
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