「寒そうな格好してるねー」
今日雪降るって天気予報でやってたでしょ。見なかったの? くすくすと笑う声が上から聞こえて、暖かいものが首に巻かれる。 雑な編み目がちらりと見えたから笑ってやろうかとも思ったのだが、いかんせんそのマフラーは私自身が編んだもので。 意外と使ってくれていたらしく、相手の匂いがしみついていた。 それだけなのに、顔が熱い。
「…ばっかじゃないの」 「ん?何?」 「何でこんなマフラーしてんのよ」
あんたなら、いろんな子から貰えるでしょ。 もごもごとマフラーの中で呟いた言葉は耳に届いたのだろうか。 締まりのない顔をした彼の手が、優しく頬に触れる。
「…なまえからのしか受け取ってないよ、って言ったら、笑う?」 「笑う、に決まってんじゃん」
冗談は休み休み言いなさいよ。 道路を眺めるふりをして視線を逸らす。 バスよ速くこい、耳まで到達した熱が隣のバカ男に気がつかれる前に。
─停留所での出来事─
(ちょっとヤニ臭いんだけど) (あっバレた?) (うっわ、生徒会副会長ー…)
2011.03.15
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