カレンダーが赤い日





「っは、菊、さん!」

全力で走ってきたせいか、脚がじんじんと痛みを放つ。
息も絶え絶えで名を呼んだ私を不思議に思ったのか、くるりと振り返った彼は、どうしたんですか、と微笑んだ。

「今日、誕生日な、んでしょう?」
「おや、」

もしかして、フェリシアーノくんですか?
未だ息が整わない私は、ただ頷く。
フェリシアーノが、今日は菊の誕生日だよって言ってたから、だから、追いかけて来たんです。
何度か深呼吸をして告げると、彼は困ったように笑顔を浮かべて。

「もう、祝っていただけるような年ではないと思うのですが…」
「でも、祝いたかったんです」

寒さで感覚がなくなった手で相手のマフラーを掴む。
ぐい、と思いきり引いてこちらに傾いてきた体に抱きつく。
たくさんの楽しいことも悲しいことも見て、感じてきた彼にとっては何の慰めにもならないかもしれないけれど。

「お誕生日、おめでとうございます」

あなたが生まれてきてくれたことに感謝します、祈るように呟いた言葉が聞こえたのか、背中にあたたかい手がまわされた。




─カレンダーが赤い日─

(みんなにとってはただの休日でも、私にとっては大切な日)



2010.02.11
菊誕!


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