洗濯物を干している私の腰を執拗に撫で回してくる手を、ぱしりと払った。 犯人は、見なくてもわかっている。
「兄さん、」
怒るよ? 睨むように見上げたけれど、相手が悪かったようで。 唇に、軽く口づけを落とされる。
「おはよう、なまえ」
週末だし、どこかに行こうか? そう言って甘く微笑む彼にどぎまぎしていたのだが。朝飯にすんぞー、 というアーサーの声に、はっと現実に引き戻された。
「あれ…アーサー?」
どうしてここにいるのだろう。 そんな私の疑問はお見通しのようで、兄さんはワインの瓶を指差す。
「昨日、うちで飲んでただろ?」
それで酔いつぶれちゃってさ。 その時のことを思い出したのか、苦虫を噛み潰したような表情をして。
「アーサーの奴が、お前の妹を寄越せってうるさくてな、」 「ふぅん…」 「まぁ、もちろん断ったけど」
そんな話をしていると、不思議そうにこちらを見ているアーサーと目があって。 それに気づいた兄さんが、アーサーにむかって大声で話しかける。
「おい眉毛!ちょっと見てろ!」 「え、ちょっと…兄さ…っ」
ちゅ、なんて可愛らしい音じゃなく、妙に艶めかしい音をたてて深く口づけられていたから、よく覚えていないけど。 気がつくと、アーサーはもういなくなっていた。
─邪魔者?いや、協力者だ─
(あのワイン野郎!呪ってやる!) (アーサー、俺もやっていいかい?) (なまえを取ったあるか…我も手伝うある) (コルコルコルコル…) (な、何だお前ら…お兄さんに何か恨みでも…) (あ、お昼ご飯食べていきますか?) (なまえ!俺は…っ) (俺のヒロインはなまえだけだぞ!) (シナティちゃんも喜ぶからこっちにくるよろし) (あんなのより僕の方がいいよね?) (え、あの、お昼は…)
2009.11.16 修正
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