「えぇぇええ!?」 「アル、うるさいよ」
好きな人ができたの。 なかなか相談できなかったことをやっとのことで口にしたというのに、私の幼なじみの反応は酷いものだった。 仰け反り、その驚きようを表すかのように眼鏡がずれていて。 しまいには手に持っていたシェイクを握り潰してしまったらしく、テーブルの上が悲惨なことになっているときた。 そんなに驚かなくてもいいじゃない、テーブルに滴っていたシェイクを拭きながら唇を尖らせると、彼はずれた眼鏡を直しながら弱々しく苦笑を浮かべた。
「だって、あのアーサーだろう?」
俺の兄貴気取りだし、君だって会ったことあるじゃないか。 あんなののどこがいいんだい? 明らかに嫌そうな表情をしながら、ズズ、とシェイクを吸い込む。 その表情が驚愕の色に変わり、気まずそうに私から目を反らした。
「誰があんなの、だって?」
聞き覚えのある声。 昔会った、懐かしいけれど大分低くなったその人の声に弾かれるように後ろを振り返る。
「アーサー、さん…!」 「お…?お前、なまえか?」
美人になったな。 口元にきれいな笑みを浮かべた憧れの人に、ただ頬が熱くなって。 その瞬間、うげえ、と顔をしかめた幼なじみには気がつかなかった。
─憧れの人で友達未満─
(名前、覚えていてくれたんですか…?) (そりゃあ、昔アルと遊んでいるのを見てたからな)
(よく言うよ) (俺にいつもなまえのことを訊いていたくせに!)
2010.02.01
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