「や、トニーいる?」 「あ、アントーニョなら、今畑だ!」 「そっかぁ。あれ、君がトニーの…?」
突然家に来た女は、にこにこと笑いながら俺を抱き上げて。 アントーニョとは違って柔らかい感触にどきどきする。
「トニーが来るまで、お姉さんと遊ばん?」
残念ながらスペイン語は上手くないけどね。 ぺろりと舌を出す彼女はすごく可愛くて、こくこくと頷いていると突然違う手に抱き上げられた。
「なまえ、来とったん?」 「うん。今来たんだけどね」
この可愛い子、トニーのうちの子でしょう? もう一度抱きしめられて顔が熱くなる。 可愛いのはあんたの方だ、そう言いたいのにうまく声が出ない。
「あ、の…」 「ん、どうしたの?」 「けっ、こん…」
結婚したって! 覚えたての拙いスペイン語をぶつけてやると、驚いたように腕が緩んで。 優しく目を細めた彼女の唇が頬に触れた。
─予約承りました─
(ってこともあったよね、トニー) (そやなぁ、あの時のロヴィーノなんてトマトそのもんやった!) (お、お前らうるせーぞこのやろー!) (あちゃー、聞こえてたん?)
2010.02.01
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