「また雨かぁ…」
窓の外を眺めて、未だしとしとと降り続ける雨に悪態をつく。 彼のお国柄だから仕方ないけれど、最近は雨ばかりで気が滅入ってしまう。 しかも、彼は彼で読書を始めてしまったものだから、こちらとしては退屈でたまらないわけで。
「もう、」
もぐもぐとテーブルの上にあるスコーンを咀嚼する。 うわ、ひどい味。 つい眉間に皺が寄ってしまったのを見てか、はたまた小さく呟いた言葉が聞こえたのか、アーサーはじっとこっちを見つめてくる。
「何、よ」 「何でも」
その言葉にむくれる私を見て、にやりと口角が上がったのがよく見えた。 あぁもう、何だってこんなにうまくいかないのだろう。 本格的にいじけ出して窓しか眺めなくなった私に苦笑しているのだろうか。 雨の日や、機嫌が悪い日にいつも感じる温もりが背中にぴったりとくっつく。
「離れなさいよ」 「なぁ、愛してる」
─雨の日のおまじない─ 機嫌が直るまで、あと一歩。
(愛してる、なんて反則でしょ) (反則も何もないだろ) (うっわ、この似非紳士!) (ってめぇ!)
2010.02.01
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