くぅ、と切なく鳴いたお腹に、めったに見ない腕時計を見やると、もう夕飯の時間で。 慌てて、目的の場所まで向く足を早めた。
「っただいま帰りました!」
台所に向かっているその人に声をかけると、おかえりなさい、という声が帰ってきて。 嬉しくて、更に落ち着きがなくなってしまう。 そんな私の心理はお見通しなのか、ふわりと優しく笑った彼の手は次々に美味しそうな料理を作り出していく。
「菊さん、すごいです」 「いえ、」
私なんてまだまだです。 そう言って肩をすくめて見せる彼に、またドキドキした。 だって、こんなに優しくて料理も上手くて何でもテキパキやるのに、まだまだだなんて。 そんなの、反則だと思う。
「あの、なまえ?」 「はい!」
何か用事でもあるのか、と期待を込めて見つめるが、どうやら違ったようで。 柔らかな声が、危ないですよ、と警告してくれる。 そこからは、アルフレッドさんが出てきますから。 慣れたように、そろそろですよ、なんて言う彼の声に被って爆発音が響いた。
─エアークラッシャー─
(なまえがいるなんて珍しいね、どうしたんだい菊!) (もー、邪魔しないでよ、アル) (あれ?もしかして、君たちはまだ恋人じゃないのかい?) (さ、アルフレッドくんもきたことですから、ご飯にしましょう)
2010.02.01
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