キスで思い出す






「あれ、フレディ…?」
「あぁ、君、は」

なまえじゃないか!
アーサーの家に来てみれば、小さい頃からずっと会っていなかった彼女がいて。
一目では気がつかなかったけれど、着ている物などからわかったのは、相変わらず彼女はフランシスに溺愛されているのだろう、ということ。
それと、アーサーにも。

まぁ、そう考えると少し面白くはないけれど。

「…で、何しに来てたんだい?」
「今日は、アーティに料理を教えに来たの」

ふにゃりと笑うその笑顔がアーサーにも向けられているのだ、と思うと無性に腹が立って。

「ふ、む…っ!」

ぐ、と唇を寄せて相手のそれを塞ぐ。
甘い雰囲気なんて全くなくて、ひたすら求めるだけのそれに、先に音を上げたのは彼女の方で。

「フレディ…?」

大きな目を更に大きく見開いて、懐かしい呼び名を口にする。
そこで自分がやった事に気がついて。

「ごめ、ん」

ばくばくと心臓が鳴っているのがよくわかった。
いくら幼いときに小さなキスを交わしたことがあるとはいえ、自分たちはもう大人じゃないか。
恥ずかしさと申し訳なさで、目を合わせることすらできない俺の首に腕が絡んできて。
また、柔らかいものが唇に触れた。




─キスで思い出す─


(あの、さ)
(どうしたの?)
(俺と結婚してくれないかい?)
(ええ、よろこんで!)


2010.02.01

超展開

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