「アーティ!」
ようこそ、愛してるわ! 突然声がしたかと思えば、熱い抱擁とキスの嵐で。 ぼん、と顔が赤くなるのが自分でもわかる。
「ほら、だから言っただろ?」
坊っちゃんは照れ屋なんだからやめとけ、って。 苦笑混じりでコメントしてくる金髪に、そうね、なんて返しながら俺の手を引く彼女は、どうやら上機嫌のようだ。 しかも、普段しない化粧をしているということは、何かあったに違いない。 例えば、恋人ができた、とか。
「…それはないか」
こいつに限って。 でも、ドーヴァーの先にいる彼女の周りには、男ばかりで。 いつ、どこで、こいつが他の男に取られるかわかったものじゃない。 まぁ、そんな俺も彼女に想いを寄せる男の1人なわけだけれど。
「ねぇ…アーティ?」 「うわ、」
眉間をぐりぐりと押されて我に返ると、目の前には整った顔のそいつが不機嫌そうにこちらを見ていて。 どき、なんて柄じゃない音が聞こえたような気がするものだから、更に眉間に皺が寄る。
「…聞いてた?」 「あ、悪い聞いてなかっ、」
ちゅ、柔らかい温かいそれが俺の唇に当たって、思考は一時停止。 心配してやってきた妖精たちによって、やっとその意図が理解できたのだった。
─戯言だと思ったら大間違いよ─
(昔から、アーティしか愛してないんだから!) (なっ、人前で何言ってんだばか!) (何よ、妖精たちなら聞かせたっていいじゃない) (後ろにフランシスがいるだろ!) (え?あ、いやぁあぁぁ!)
2009.11.16 修正
アーサーとフランシスの幼なじみ的な。
|