5日も経っていないのに






ぐずぐずと泣き出しそうな空を見上げて、溜め息が漏れた。

最近の崩れやすい天気には私も参っているんです。
そう彼が言っていたのを思い出したが、いくらなんでもこれは酷いだろう。
連日の雨で、綺麗に咲いていた花は散り、どこを見ても水溜まりだらけ。

「しかも、菊さんに会えてない」

一番の悩みを口にすれば、更に気が滅入ってしまって。
とぼとぼと道を歩く。

「…おや?」
「菊さんいないかなぁ、」

呟きながら俯きがちに歩いていると、ぐいと引かれる手。
突然のことに抵抗するより早く、優しい匂いに包まれて。

「お久しぶりですね」

お元気でしたか?
ふわりと優しい微笑に、ちょっぴり泣きそうになる。
でも、こんなところで泣いたら彼も困るだろうし、何より呆れられたくなかったから。

「会いたかった、です」

驚いて固まっている彼は放っておいて、ぎゅう、と涙を見られないように抱きついた。




─5日も経っていないのに─


(久しぶり、なんておかしいですね)
(いい、です。だ、だって私、菊さんに会いたかったから)
(ええ、私も会いたかったです)



2009.11.16 修正



<< >>  
もどる