「ルッツ、」
あれ見て! ぐいぐいと人目も気にせずに手を引かれる。
一応自分よりも年上であるはずのこいつは、何歳のつもりなのだろうか。 無意識のうちに口をついて出てきた溜め息に反応した彼女は、少しだけ歩く速度を緩めて。 小さく、注意していなければ聞こえないくらいに小さな声で謝ってくる。 そんな行動すら愛しく感じて耐えきれずに腰を引き寄せた、のだが。 真っ赤になった彼女に胸を押し返されてしまって。 仕方なく耳元に口を寄せる。
「…なまえ」
これでもか、というくらいに低い声を耳に吹き込めば簡単に力が抜けていく相手の腰に頬が緩むのを抑えられない。
「どうした、」
顔が赤い、 指摘してやれば更に真っ赤になった彼女に叩かれて。 それを止めるために、互いの指を絡めてやる。
「な、な…っ!」 「別に構わないだろう?」
多分俺は今、相当意地悪く笑っているのだろう。 羞恥でぷるぷると震える彼女は、やはり真っ赤な顔で罵ってきた。
「このっ、ドS!」
─どっちが大人なんだか─
(わかったから、そんなに怒るな) (わ、わかったなら何で笑ってるのよ!) (いや、俺の方が年下だと思い出したからなんだが) (…〜〜っ!)
2009.11.16 修正
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