どん、前から歩いてきた人間と肩がぶつかる。忌々しげな舌打ちが聞こえた気がして、下に向けていた視線をゆるゆると上げた。 すみません、と小声で言った自分はお構いなしに、ぶつかった相手は足早に過ぎ去って行く。 立ち止まる自分をおいて、めまぐるしく動く時間。他人に興味がない、といった様子の人間達。 そんな、外の世界が怖かった。ついていけない、と思った。
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「ああ、」
食べるものがありませんね。 いつの間にか、大量に買ったはすのカップラーメンが底をついていた。気が付かなかった。いまインターネットで購入したとしても、手元に来るまでに数日かかってしまう。 買いに、いかなくては。 久しぶりに出す、はきつぶしたスニーカーに足を入れて。外に出るついでに、と5リットルのゴミ袋を片手に持った。燃えるごみの日は明後日だけど。まあ、いいでしょう。
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久方ぶりの外は寒かった。上着でも羽織ってくるべきだった。 小雨が降りだしたが走る体力もなく、とぼとぼと暗い道を歩く。夜中だからか、コンビニの店員は相変わらず愛想が好くなかった。ついていない。 帰り道を急いでいると、カシャン、とプラスチックのケースのような音が聞こえた。家でよく聞いている、まるでCDケースが床に落ちるような音。 本能的にそちらを見ると、道の脇にケースが落ちている。不自然にもほどがある。 これが漫画かアニメであれば、拾って帰って起動すると美少女が出てきて恋に発展するのだろう。
「……美少女、か…」
まさかそんなことが現実で起こるはずがない、とは分かっていても。なぜか。 そのよくわからない物体が、気になってしかたがない。 周りに人影がないことを確認し、そっと手にとる。 服の裾で泥を拭うと、よくあるやましいゲームに出てくるような絵柄の少女が微笑んでいた。
_______ ひきこもり本田さんのプチシリーズ。 のんびり続きます。とある曲がイメージです。
2014.02.20
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