「久しぶり、アーサー・カークランド。いえ、生徒会長様?」 「呼び名なんかどうでもいい。どうしてお前がいるんだ」
どん、苛々を逃がすために机に拳を打ちつけると、ソファでくつろいでいる女が、ずいぶん怒っているのね、と退屈そうに言った。 誰のせいだと思ってんだ、こいつ。神々はこっそり見守るのがセオリーなんじゃないのか。 俺の心を見透かしたように、そうねえ、と紅い眼を細めて呟く。
「誰かが望んでいたから、というのと、最近は精力をくれるひとが多いから」 「女神が、聞いて呆れるな。それじゃあ悪魔とほとんど変わらねえだろ」 「でも、そんな女神が好きなんでしょう?」
からかうように言った女が机に乗り上げてくる。まともに着られていない制服から覗く肌が、やけに艶かしい。
「仕事ばかりして、さぞかし溜まっているでしょうね」
するり。滑らかな指が頬に触れて、愛おしげに耳の形をなぞる。欲望のままに襲ってほしいらしい。繰り返し肌を重ねてきたせいで、触れ方でなんとなく何を求めているのかわかってしまう自分が嫌になる。同時に、面白いくらいに反応を示す自分の身体にも嫌気が差した。 八つ当たりの意味も込めて首筋にかぶりつく。瞬間、してやったり、とでも言うかのように紅がきらめいた。
─勝算はゼロ─
鍵を握る勝利の女神は彼女なのだから。
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