だって幸せなんでしょう?



※同姓愛表現有。苦手な方はお引取り願います※








なまえ、私、結婚するの。
べしゃ、と音を立ててフォークからクリームが落ちた。
それを何食わぬ顔で掬って口に入れた私は、彼女の目にはどのように映っただろうか。
ショックを受けたとかではなくて、いつものおっちょこちょいだと思ってくれていればいいんだけど。

「おめでと、エリザ」

エリザが幸せだと、私もうれしい。
当たり障りのない祝福を述べながら、滲んだ視界をごまかすようにケーキのイチゴをつつく。
そんな私を見て、なまえみたいな優しい親友がいて幸せ、と言う彼女の笑顔があまりに綺麗で。苦しくなる。
優しいんじゃない。違うんだよ、エリザ。私は、結ばれるはずもない恋が終わってつらいだけなの。
明るい緑色のテーブルクロスに、まだら模様ができていく。泣くつもりなんてなかったのに。笑って、親友を祝うはずだったのに。情けない。

「ほら、泣かないの」

涙を拭ってくれるその手が、昔に比べて柔らかくなった笑顔が、私にしか向けられない声音が、全部、全部愛おしかった。

「すき、エリザ、ほんとにおめでとう」
「ありがとう。私もなまえのこと大好きよ」

彼女の結婚式まで、あと三ヶ月。




―だって幸せなんでしょう?―

(ひとのものになってしまった貴女が大好きで、大嫌いです)




2014.01.23

リハビリを兼ねて。

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