彼と一緒に泊まりに来たルートヴィッヒの家の寝室は相変わらずの室温の低さで、毎度のごとく目が覚めてしまった。窓を見てみるが外は暗い。今は何時だろう。 隣で眠っている菊とフェリシアーノを起こさないように携帯に手を伸ばしたが、サイドボタンの位置がわからない。仕方なくできるだけ音を出さずに開く。
「う、眩し」
煌々と光を放つ画面から必要な情報だけを手に入れて、元の場所に戻す。現在の時間は午前5時。確か布団に入ったのが3時ころだから、まだ2時間ほどしか経っていない。
「…さっむ」
普段たくさん布団をかぶっていて寒さへの耐性がない上に、寝起きである私にはこの部屋は寒すぎる。もぞもぞとフェリシアーノの布団に入り込んで温かさを堪能していると、こんな時間に起きているはずがないだろうと思っていた彼と、目が、合った。
「…なまえ?どうしたの?」 「…目、覚めちゃっただけ」
まだ早いし、寝てなよ。 布団に入っていたことに触れられる前に出てしまおうと体をずらそうとしたけれど彼が気付かないはずがなく、笑顔で引き寄せられた。あわてて体を押し返すも、ただのヘタレだと思っていた彼の力は、私が想像していたよりもずっと強くて。ねえ、といつもより低い声が囁いた。
「あっためてあげようか」 「……っ」
今までに見たことがないような目をした彼の指が、私の唇に触れて、口を開かせる。後ろには菊もルートヴィッヒもいて、いつ起きるかわからないのに。何より、恋人同士になって初めてのキスなのに。戸惑って目を逸らした私にじりじりと近づき、髪をくるくると弄びながら、今度は優しく問われた。
「キス、していい?」 「…聞かなくても、わかるじゃん」
でも、聞くとなまえが可愛い顔するから。 彼が一瞬笑って、すぐに表情を戻す。体ごと引き寄せられて、フェリシアーノの顔が近づいてきて。ほんの一瞬唇が触れたかと思ったら、角度を変えて、油断しきっていた私の口内に舌が入り込んできた。息が、うまくできない。
「ん、…っみんな、起きちゃう」 「なまえが声出さなかったら大丈夫だよ」
俺は聞きたいけどね。 悪魔のような微笑みと、その後のよい子にはとてもお見せできないようなキスのせいで全く眠れなかったのは言うまでもなかった。
─睡眠不足─
(ほんっとあり得ない!もう!全然寝れなかった!) (可愛かったよー。それに、どうしてもしたかったんだもん) (うるさいばか) (えー)
2012.01.22 羊の皮をかぶった狼だよ!って話
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