君と同じ気持ちを僕も






酒は呑んでも呑まれるな。昔の人は本当にいい言葉を残したものだと思う。
吐いたばかりでテーブルに突っ伏している幼なじみであるロヴィーノの背中をさすりながら時計を確認する。日付はまだ変わっていないけれど、この様子だと朝方まで具合が悪い状態が続くだろう。

「まだ吐きそう?」

首を振って否定を表している彼の顔色が恐ろしく悪い。手に触れると、ひんやりとした感覚が返ってきた。体温が下がっている。どうにかして暖めないと。

「…んー、手、繋ごうか?」
「………ん」

拒否しないなんて珍しいなあ。
頷いたのを確認してゆっくりと手に触れたけれど、違う、とでも言うように首を振った彼が急に指を絡めてきて。どうしよう、と思う間もなく逆の手もさらわれていった。
なんだか、すごく気まずい。
気まずさと恥ずかしさをどうにか紛らわせようと、繋がれた手に力を込めて冗談っぽく笑ってみる。

「なんかさ、こういうのって愛されてるー!って感じするね」

なんてね!
相手から表情は見えないだろうけれど恥ずかしさでへらへらと笑ってみせると、ぎゅ、と手に緩く力がこもった。何か言いたいらしい。少し近づいて耳を澄ませてみる。程なくして、苦しそうな声が耳に届いた。

「っ……あいしてる…」
「ん、……え?」

笑いかけた表情が固まる。冗談のつもり、なのだろうか。でも、彼はそんな冗談が言えるようなひとじゃなくて。じゃあ、これは、一体。

「…ね、え、ロヴィーノ。今のは…いまの、愛してるは、友達として?」

首が横に振られて、心臓がフル稼働を始めた。これ以上聞いたら、きっと戻れない。しかも、相手は酔っていて、明日の朝になれば忘れてしまっているというのに。でも、でも。

「じゃあ…いまのは、女、として、なの…?」
「………、」

返ってきたのは、肯定を表すであろう頷きで。頭が真っ白になった私の手の甲に押し当てられた彼の唇の感触だけが、唯一これが現実であると知ることができる手段だった。




─君と同じ気持ちを僕も─

(一応言っとくけど、私、誰にでもこうやって世話するわけじゃないから。意味、わかる?)
(……は、きそ、)
(はい、袋あるから大丈夫。水分は今買ってきてくれるって)



2012.01.01
実話です。需要があれば続きます。

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