小さな嫉妬






フランシスになんとなく聞いていたから、なまえから生徒会長に告白された、という話をされてもそこまで驚かなかった。ただ、事実だったのか、と思っただけで。

「あの堅物眉毛がなまえのこと好きなんて知らんかったわ」
「知ってたら逆にびっくりだよ」

あんた、あの人と仲良くないじゃん。
いつの間にか会長さんからあの人へと呼び名が昇格している件の彼に胸の辺りがもやもやとしたが、気にしないことにして言葉を続ける。

「随分気に入っとるみたいやんな」
「そう聞こえる?」

困ったような表情に、今のはまずかった、と後悔が募った。困らせるつもりはなかったけれど、満更でもなさそうな彼女に、つい。
ずっと、一緒にばかなことをすることができると思っていたから。だから、少しだけ寂しいのだと思う。もしかしたら女友達をとられるかもしれない、というような子供くさい嫉妬という可能性もあるのかもしれないけれど。

「そんで、なまえはなんて答えたん?」

ああ、また、失敗した。きょとんとして俺を見るなまえから目を逸らして、深く息を吐く。

「ええと、あー、なまえがあの眉毛と付き合うことにするんやったら、あれやんな。俺もあいつと仲良くせな」

口を動かせば動かすほど、どうしようもなくなって混乱する。なにもかも、あの眉毛が悪い。

「そいで、えーと、」
「アントーニョ」

あたし、あの人と付き合うなんて一言も言ってないよ。
にんまりと笑ったなまえが俺の顔を覗き込んでくる。
いやあ、あたし想われてるなー。なんて、楽しげな声で言いながら歩き出す彼女を慌てて追って。隣に並んだ彼女のやけに上機嫌な様子に首を傾げた。




─小さな嫉妬─

(なまえが眉毛と付き合って六弦になったらどないしようかと思たわ)
(はあ?六弦?)




2011.11.15

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