呆れるくらいに切なくて





確かそれは、狐のような耳が生えた、可愛らしい天人を助けたのが始まり。

「銀時さま!」

おかえりなさい。
ふさふさの尻尾を振りながら駆け寄ってくる彼女は、数日前に神楽が道端で拾ってきた(らしい)狐の天人。
外に出るときはただの狐だが、どうやら人間の形にもなれるようで。
万事屋の中では人間として生きている。

「そういや、」

お前、家とか帰らなくていいわけ?
そう、ただ好奇心で訊いただけだった。
でも彼女は、俯いてしまって。

「…帰れません」

小さく、それだけ言うと狐の姿になってしまった。
確かこれは彼女が誰とも話したくないときに取る行動だ、
大して一緒にいるわけではなかったけれど、それだけはわかって。
自分は悪いことを言ってしまったということがよくわかった。
それでも、どうしてか謝れなくて。
ある晴れた日に、彼女は突然万事屋から消えてしまった。
もちろん捜したけれど、決して彼女が見つかることはなくて。
もう諦めてしまおうか、
そんな空気になった瞬間、突然に降り出した雨。
天気は晴れ、だけど雨というこの状況。
まわりが慌てている中、俺だけが空を見上げていた。




─呆れるくらいに切なくて─


(狐の嫁入り、かよ…)
(銀ちゃん、泣いてるアルか?)
(んなわけねーだろ)
(でも銀ちゃん泣きそうな顔してるヨ)

(こんなことになるくらいなら)
(もっと早く、この想いに気づいていればよかった)


2008.10.01

2010.03.10 修正


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