学校帰りに、ケーキ屋さんやちょっとオシャレなカフェによって、これまたオシャレなスイーツとかを食べながら、恋バナや可愛いものについておしゃべりする。 なんてのが、少女マンガに影響されての私のちょっとした夢だった。 が、 「食わないんなら貰うけど?」 『食べるよっ!!』 私の目の前でさもおいしそうにケーキを口にするのは、同じクラスの岩淵くんだ。 何で私は岩淵くんとケーキなんて食べてるんだ? 私たちは断じて付き合ってなんかいない。 なんてったって、今日がファーストコンタクト。 もうクラス替えがあって、4か月もたっているのに・・・。 事の発端は、放課後私が見ていたスイーツ特集の載った雑誌である。 明日の休みにでも誰か誘って行こうと友達に話を持ちかけたら、みんな部活やらデートやらで断られてしまった。 その腹いせ・と言ってはなんだが、おひとり様をしてやろうと近くのめぼしいお店を、雑誌の中から見つけ出していた。 岩淵くんが教室に入ってきたのはそんな時だった。 「・・・何やってんの?独り言、廊下まで筒抜け」 『へっ!?』 岩淵くんはスポーツバックに第二ボタンまであけられた制服・と、いかにも部活帰りと言った格好だった。 しかし、時計はまだ4時半である。 『あ、れ?岩淵くん部活は良いの?』 「今日は休み、野球部にグラウンド取られちまった」 『うちの運動場狭いもんね、サッカー部も大変なんだ』 多分ランニングをやってる最中に言われたのだろう、岩淵くんはタオルで汗を拭っている。 その何でもない仕草が、私の目をくぎ付けにした。 だって、岩淵くんの使ってるタオルが、あんまりにも可愛かったから。(カエルのタオル!!!) 「何見てんだよ」 『え、あ、だって・・。岩淵くんカエル好きなの?』 と、ちょっと遠慮がちに聞いてみると、みるみる赤くなる岩淵くん。 ばっ・とタオルを隠し、「悪いかよ」と不貞腐れたように返す岩淵くんを、失礼にも可愛いと思ってしまった。 クラス、いや学年、学校一のイケメンだと賞される岩淵くんが、カエルのタオルを使ってる。 よく見たら、カバンについているキーホルダーもカエル。 『それって、手ぶケロ・だよね?』 「へ?お前知ってんの?」 『だって、ほら』 私は自分のカバンを見せた。 実は私も、ものすごくカエルが好きだったりする。 「お前・・、俺より好きそうじゃん」 『だって可愛いんだもん』 そう言うと2人して笑ってしまった。 岩淵くんの笑った顔なんて、初めて見た。 「あ、その店。ケーキものすごく美味いんだよな」 『岩淵くん、ここ行ったことあるの?』 「ああ、家の近くだから」 岩淵くんが言ったお店は、その雑誌でも上位にランクインしているこれまた可愛らしいお店。 私が明日、おひとり様をしてやろうかと思っていたお店だ。 「なに?お前その店行くわけ?」 『うん、でも場所がいまいちわかんなくって・・・』 紹介ページの下についてる小さい地図じゃあ、行ける自信がない。 「じゃあさ、今から行こうぜ」 『は?』 「その店、連れてってやるよ。俺も丁度行こうと思ってたし」 そう言って岩淵くんに連れられ、冒頭に戻るというわけだ。 岩淵くんはお店の人と仲が良く、奥から出てきたパティシエの人に、新作のケーキの試食なんかを頼まれたりしていた。 カエルグッズが好きだってことにもびっくりしたけど、ケーキとか甘いものが好きだっていうのにもびっくりした。 なんか、女子高生みたい。 「人の顔見て笑うとか、失礼な奴だなお前」 『へ?』 「はっ、ばーか。クリーム付いてんぞ」 そう言って岩淵くんは、私の頬についたクリームをナプキンで拭ってくれた。 その時に触れた岩淵くんの手のせいで、私の顔はイチゴよりも赤かったに違いない。 恋バナ、スイーツ、可愛いもの。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 学パロ企画に提出。 手ぶケロはもろ私の趣味です。 可愛いです、カエル。 主催者のヂル様、素敵企画に参加させていただきありがとうございました(^◇^) |