罪の意識




たまに襲ってくる罪悪感に悩まされている。
その原因はただ1つ、俺たちの黒歴史だ。何しても忘れられない、忘れちゃいけない。たった13、14歳の子供が抱えるには少々重すぎる、それ。自分だけが抱えるならいいかもしれない。だって、我慢すればいいことだし。だけども、他の人、特に恋人なんかが同じ状態だとしたら、俺はどうなる?




「緑川、勉強教えに来たよ」

夕飯の後に勉強を教える、という約束を果たすために緑川の部屋のドアを数回ノック。いつもならすぐにやって来て、笑顔でドアを開けてくれるはず、いつもなら。
だが今回は返事がない。どうしたのかと思ってそっとドアノブに手をかけた。

「緑川?」

ドアの向こう側には、布団にくるまってベッドの上に乗っている緑川がいた。まさに団子のような、それ。

「どうしたんだい?」

そっと布団をはがそうとすると、俺がかけた力の倍くらいの力で元に戻される。だが今の俺はかなり好奇心に満ち溢れていた。そして布団をはがすことに成功したとき、自分で自分を殴りたくなった。
泣いていた。あの緑川が。いつも笑って、周りも笑顔にしてしまう緑川が、泣いていた。

「何か、あったの?」

優しく問えば、恐る恐る口を開く。

「俺、嫌な奴だ」
「どうして?」
「みんなの学校壊したりして、それも謝らずに。俺なんて…。俺なんてっ!」
「リュウジ!」

緑川の小さな叫び声と一緒に叫んでいた。それと同時に彼の身体は俺の胸に収まった。

「教えてよ、どうして急に?」

背中を優しく擦ってやりながら、耳元でゆっくり話してやる。嗚咽が止まり、少しだけ落ち着いた緑川は、少しずつ話し始めた。

園に入ったばかりの子供たちが、積み木で遊んでいた。高い高いお城ができた。だけどそれは、その中のボスのような子に壊されてしまう。もちろん作った子供たちは泣いた。

それを見ていた緑川は、それが自分たちのしたことと重ねてしまい、涙が止まらなくなったのだという。
もちろん子供たちは悪くない。だって、何があったのか知らないのだから。
だけども、傷ついた子供がここにもいる。消えない罪の意識に悩まされて、泣いて。俺にも時々あるけれども、緑川がここまでとは思わなかった。
全て話し終えて少し疲れたらしく、体重が一気に俺の身体にかかる。それを抱きかかえ、もう一度ゆっくり背中を擦る。呼吸も落ち着いて、だいぶ楽になったようだ。

「…大丈夫だよ」

俺の口から不意に出て来た言葉。

「お前だけじゃない。皆の罪だ。一生背負わなくてはならないけれど、皆で抱えてるなら大丈夫だと思わない?」

こくり、と小さく頷いてから、首筋に腕が回った。

実際実行したのは緑川なのだから、罪が重く感じるのは仕方ないだろう。
でも、それもひっくるめて皆で抱えていけたら。
もちろん、俺だって。
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