FFIが終わり、ヒロトが帰ってきた。俺たちはずっとテレビで見ていたせいかあんまり久しぶりな感じはしなかったけれど、彼は全く違うらしく、帰ってきたときの顔にはとても懐かしいような感じが表れていた。


その日の夕食のこと。ヒロトの帰還により久しぶりに全員で食事ができる、ということで、園の女子たちと瞳子さんの手によって、とてつもなく豪華な食事が作り出されていた頃、俺は1人部屋で悶々としていた。
いや、本当は手伝わなければいけない。でも身体が向かいたくないと言っている。その理由は1つ、ヒロトだ。
帰ってきたときからなんとなく目を合わせづらくて、それとなく避けてしまった。自分の行動に後悔の連続。
本当は、久しぶりに会ったのだから、ヒロトにおもいっきり甘えたかった。まだイナズマジャパンにいた頃とか、園にいた頃と同じように。自分の弱いところを全部さらけ出して、ヒロトにくっついていたい。

「リュウジ、ご飯」

声とともに部屋のドアが数回叩かれた。大夢か。

「んー…」

曖昧な返事を返してみれば、小さく「入るぞ」という声がした。

「どうしたんだよ、お前」

机に突っ伏した俺は、大夢の目にどんな風に写っていたのだろうか。

「ヒロトのことか?」

小さく頷くと、ため息が返ってくる。

「お前が今どんな風に思ってるか知らないけどさ、こんな時くらい正直になってもいいんじゃねーの?」

それだけ言い残すと、ドアの閉まった音がした。遠くで足音が聞こえる。大夢は夕食に向かったのだろうか。
仕方なく、俺も夕食に向かうことにした。



夕食後、盛大なため息とともに部屋に戻った俺は、さっきと同じように机に突っ伏した。
夕食は、それはそれは豪華で、普段手を抜いているのではないかと思えるレベルだった。瞳子さんも女子たちも、それだけヒロトの帰りが嬉しかったのだろう。
でも俺はというと。大好きな夕食中であるにも関わらず、ずっと俯いたままで、いつもより多くない量を食べただけでもういい、と食事の席を立ってしまった。ヒロトのせいだ、ちくしょう。

「緑川、いる?」

突然のその声に飛び起きる。聞き慣れた、でも最近は聞いていなかったその声。

「…やぁ」

目に入ってきたのは鮮やかな赤。ずっと目にしていなかったその色に、少し頭がくらくらする。
そしてヒロトは、何も言わずに俺のベッドへと腰かけた。しばらくの沈黙のあと、ヒロトが口を開いた。

「寂しかった」

そのひとことに驚いて振り返ってみれば、にっこり笑ったヒロトがいる。

「ずっと。緑川がいなくて寂しかった」

目の奥がじんわりと温かくなる。なんだよこいつ、俺より先に言いやがって。

「俺だって、寂しかった」

気がついたら俺はヒロトのそばにいて、今にも泣きそうだった。
片方でヒロトの腕を軽く取って、もう片方で溢れそうな涙を拭く。

「どうしたの、緑川」
「もう、どこか行っちゃやだ」

思わず出た本音。ヒロトに迷惑をかけてしまうとわかっていても、言わずにはいられなかった。

「大丈夫、どこにも行かないから。…ほら、おいで」

小さく広げられた腕に飛び込んだ。ヒロトの匂い、体温、全てが心地よい。背中を撫でる手が気持ちいい。

時にはこんな風に甘えるのもいいかもしれない、と思った。


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