今年の始まりはこれで 年越し蕎麦を食べて、毎年内容の変わらない特番を見るのが俺の大晦日の過ごし方。 今年だって、例外ではない。 こたつにもぞもぞと入り込み、足を伸ばして座る。寝っ転がろうとも思ったけど、瞳子さんに注意されてやめた。 テレビをつければ、やっぱり毎年同じような番組で。それを別につまらないとも思わず眺めていた。 「ひゃうっ!?」 「どうしたの緑川、変な声出して」 眺めていたら目の前に突然みかんが置かれた。正しくは、みかんの入ったかご。 「俺も一緒に見ていい?」 振り返れば、そこにいたのはヒロト。どうやら俺の前にみかんのかごを置いたのもヒロトらしい。全く、心臓に悪いったらありゃしない。 「あー、いいよー」 なんだかもう色々気だるくなってきて、適当に返事をした。こたつにやられた。温かいそいつは、俺の思考まで温めて溶かしてしまうらしい。恐るべしこたつ。 そんな変な考え事をしていたら、何やら背中が温かい。寝転んでいるわけでもないのに、妙に温かい。 「…ヒロト?」 恐る恐る振り返ってみれば、ヒロトが俺の背中に貼り付いている。足はこたつに突っ込んでいるのだが、体は完全に俺にくっついていて、まさにべったり。正直、重い。 「ヒロト、離れて」 「やだ」 絶対離さない、とでも言いたいのだろうか、俺のお腹に回った腕が離れる気配は全くない。 首筋のあたりに顔を埋められて、なんだかくすぐったい。 「たまにはさ、俺が甘えたっていいだろ?」 そう呟いて一層体重をかけてくるものだから、また背中が重い。 でも、いつもの彼が絶対にしないようなことをしてくるものだから、どうしていいか困る。テレビもおちおち見ていられない。たまに聞こえる「リュウジ…」という呟きに反応する体。熱い。 「5、4、3、2、…」 耳に入ってきたのはカウントダウン。もうそんな時間か、とか考えていると、急に首筋から熱が離れた。 「ヒロト?」 ちょっと振り返ろうとした、瞬間。 「…1、0!」 …ちゅ。 聞こえたのは、年が明けた瞬間の音と、頬からのリップ音。 ぎこちなく隣を見てみれば、犯人の顔。したこととは正反対の、実に爽やかな笑みを浮かべて。 「今年もよろしく、緑川」 俺の今年は、赤面で始まった。 -------------------- フリー期間は終了しました |