気がつけば、ということはよくあるだろう。
中学生だった彼らも、高校生になっていた。


雷門中を卒業した2人だったが、鬼道は帝国学園の高等部へ進学し、以前の仲間たちと、雷門で身につけたサッカーの技術にさらに磨きをかけている。円堂は、雷門中とは違う系列の高校である雷門高校にスポーツ推薦で入学し、豪炎寺、風丸たちと一緒にサッカーを続けていた。少し寂しいかな、と思いながら。


高校生になって、鬼道の生活は一変した。
朝起きて学校へ行って朝練、終わったら授業を受けて、放課後にはまた練習。帰宅したら帰宅したでその日の復習と翌日の予習を行い、明日の練習のために眠りにつく。こんな生活を送っているため、中学の頃の仲間と連絡などとる暇などありはしない。そんな毎日で、中学時代の仲間たちの影は薄れつつあった。


「日曜に、練習試合だ」

ある日の練習終了後のミーティング。練習で流した汗をタオルで拭きながら、監督の話を聞くメンバーたち。だがその瞳はやはり真剣。

「相手は、雷門高校」

メンバーは皆中学からの持ち上がりなので雷門中のメンバーがほとんどいる雷門高校のメンバーは知っている。きっと、懐かしいな、とでも思うだろう。
だが、鬼道は違った。「雷門」という名前を聞いたとき、薄れていたかつての自分の仲間を思い出した。
豪炎寺、風丸、染岡に半田。次々に頭の中に蘇る記憶。そして最後には、円堂。恋人でもあった、円堂。

『次からは、いい友達同士で』

卒業式の日に交わした別れの握手が最近のよう。もうあれから2年近くたっているというのに。
その日は結局、そのことだけを考えながら帰路についた。途中で佐久間に「大丈夫か、鬼道」と心配されていたが。





日曜日、練習試合の会場である雷門高校。

「よろしくお願いします!」

雷門メンバーが一列に並んで挨拶。その中に円堂がいた。
他の選手とは違うデザインのユニフォームと背番号1から、GKを続けているということが見てとれる。外見はあまり変わっておらず、オレンジ色のバンダナもやはり健在。変わったとしたら身長だろうか。それと雰囲気。中学生の頃にはなかった大人っぽさがあった。
更衣室に案内されて、着ていた制服からユニフォームに着替える。

「…あいつら、変わったな」
「は?」

隣で着替えていた佐久間が呟いた。

「特に円堂。だいぶ大人っぽくなったよな」

同じことを考えていたのか、と苦笑する。それだけ円堂の変化が大きかった、ということだ。鬼道は佐久間に「そうだな」とだけ返し、更衣室を後にした。


鬼道の背番号10。それを見た円堂は初めて鬼道と試合をした日を懐かしく思った。あれから3年が過ぎたのか、と思う。茶色のトレッドヘアーもゴーグルも変わっていなくて、身長は伸びて、体は少し筋肉質になっていて。そこまで考えて円堂は首を大きく左右に振った。それはもう、ぶんぶんと音がするくらい。そして自分の両頬をパァンと叩いた。そんなことを考えている場合ではない、試合に集中しなくては。


そして試合が始まった。練習試合なのに、まるで大会の決勝戦のような試合。豪炎寺のシュートの威力は格段に上がっていたし、風丸の脚はさらに速くなっていた。帝国だって、連携プレーは一段と強力なものになっており、雷門を苦しめた。

鬼道がドリブルでフィールドを駆け抜け、一気にゴールへと向かう。もちろんそこでゴールを守るのは円堂。

「よし、来い!」

そう言って構えてみせる円堂に、鬼道はふっ、と微笑んだ。
そしてとても速いスピードのシュートを撃ち込む。バァン!と大きな音がして、そのボールは円堂の手の中へと吸い込まれた。

そしてホイッスルの音。試合が、終わった。

結果は引き分け。それでも両チーム共に選手の顔は晴れやかだ。

「強くなったな、鬼道!」

ニカッと笑う顔はあの頃と同じ。

「あぁ、円堂もな」

そして交わした握手。鬼道にとっても、円堂にとっても、自分のレベルアップに繋がる試合となった。






「お疲れ様ー!」
「じゃーなー」

試合が終わり、帝国が帰ったあと、雷門メンバー全員でフィールドの整備やボールの片付けなどを行い、ミーティングをして今日の日程は終了。もう時間帯は夕方。円堂も、風丸や豪炎寺と帰路につこうと校門へ向かった。

「あ」

豪炎寺が声をあげた。その視線の先を見れば、帰ったはずの鬼道がいた。

「鬼道…」

呟いた瞬間、ポンッと背中を押された。

「行けよ。話したいんだろ?」
「豪炎寺…。でも…」
「お前らしくないぞ、円堂」

珍しく渋る円堂。それを見た風丸は、

「よし、帰るぞ豪炎寺」

豪炎寺の腕を引っ張ってスタスタと行ってしまう。

「お、おい!風丸!」

去っていく本人を見ると、後ろを向いたまま大きく手を振る風丸の背中が見えた。







「よ、よぉ」
「あぁ」

2人きりで話すのは久しぶり。だから気まずい。お互いに何を話したらいいのかわからない。

「強く、なったな」

鬼道が口を開いた。だが表情の変化は全くと言っていいほどわからない。

「鬼道も。俺、鬼道とまたサッカーできてよかった」

鬼道が笑った、ように見えた。「そうか」という短い返事でもわかる気がした。

「…また一緒にできればいいのに」

聞こえないように呟いた。夕焼けの光で少しばかり赤く染まった鬼道が恋しかった。
好きだ。まだ好きだ。それはもうお互いにわかっていた。汲み取るようにわかる目の前の相手の気持ち。口に出せないのが、たまらなくもどかしい。
少しでも気づいてほしくて、そっと鬼道の制服の裾を掴んだ。離したくない。離れたくない。離れてなんて、ほしくない。自分たちで決めたことなのに。

「…もう、終わったことだ」

そっと、自分の制服から円堂の手を外す。これ以上掴んでいられたら、涙が出てきそうだった。

「…そうだよな」

おとなしくそれに従った円堂も、泣き出しそうだった。

「また、一緒にやろうな」
「あぁ、約束だ!」

もう一度握手を交わす。再び見た円堂の笑顔は、少し辛そうだった。

「じゃあ、俺はこれで」
「うん、また来いよ!」

赤いマントを翻し、同じ色の空間へと吸い込まれていった鬼道の姿を最後まで見送った。

「あれ、俺どうしたんだろ…」

勝手にポロポロと流れる涙を両手で拭う。再び顔を上げてみれば、空と同じ茜色の光が円堂を包んでいた。


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相互記念の鬼円!
これのプロットは本人の目の前でがりがり書いてましたww

いつもありがとうございます!!本当にお世話になってます(*^_^*)

相互ありがとうございました!



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