その罪は名も無く 鬱陶しいくらい爽やかな朝。いつもなら起きる時間なのだけれども、昨日の行為のせいか身体がまだだるいため二度寝しようか…とぼんやり思っていた。 「う…ん…」 そんな中、小さな唸り声が聞こえてそっと布団を捲ってみると、一糸纏わぬ緑川の姿が。 ヤバい、朝なのにまた…とかなんとかやけにはっきりとした思考の中、長い黄緑色の髪に触れてみる。ふわふわした猫っ毛は、俺の手に不思議なほど馴染みがよかった。そのままゆっくりと彼の頭を撫でる。すやすやと立てている寝息が何とも言えず気持ちよさそう。 昨日かなり無理をさせてしまったのが心にのしかかってくる。自分のしたことはとても辛かっただろうに、この幸せそうな寝顔ときたら。まぁ、こんなことを言っているとどこかの誰かに「お前はアホか?」とツッコまれてしまうのだろうけれども。 そう思う中、ふと目にしたものがある。ふわふわの緑髪の中に見える、少し焼けた肌の色。それは、耳だった。形のいい、緑川の耳。そして俺は、つい出来心でやってしまったことがある。 そっとその耳に顔を近づけ、 「…リュウジ」 そう囁いた。だけど何も反応がないから、もう一度囁く。そして俺は後悔することになる。 「…ヒロ…ト」 明らかな寝言。だけれども、その声が可愛くて愛しくてたまらない。朝にも関わらず、再び行為に及んでしまいそうになった。 「あれ…ヒロト…?」 そんな気持ちの中、緑川がほんの少し目を開けた。しかしその目はぼんやりとしていて、起きてるのか起きていないのかわからない状態だった。 「ヒロトだぁ…」 そんなことを呟いて、ふんわりと笑う。なんだこれ。なんなんだこれは。どう考えても俺をどうにかしたいとしか思えない。すると聞こえてきた規則正しい吐息。どうやらまた眠ってしまったらしい。 「敵わないよ、お前には」 自分のしたことに全く気づかずにすやすやと寝ている緑川の額に一発デコピンをかましておき、またちょっとした唸り声を上げるのをほんの少し笑いながら、再びその頭を撫でてやった。 ------------------------- 遅くなって申し訳ありませんでした。 企画参加ありがとうございました! |