※マサキ視点
















秘密




たまには顔を出せ、と言われてヒロトさんのいる会社にやってきた。少々、いやかなり面倒くさいけれどやれと言われてしまったのだから仕方がない。道を歩いている途中ですら文句を言いそうだった。危ない危ない。

「はい、では少々お待ちください」

受付のお姉さんに話すと名前を言うだけで社長室に通してもらえた。ヒロトさんもやるべきことはやってくれている。正直少しびっくりした。こんなに大きなビルを持つ大財閥の社長が、こんなただの中学生のために時間を空けて、会おうとしてくれている。知っている間柄なのに、なんだか不思議な感じがした。

そして社長室の前。いざ入ろうとノックする手を上げた瞬間だった。

「なに…っ!するんだよヒロト!」
「仕事中は『社長』でしょ?」

手を止めた。何だ今の声は。その続きが気になって、ドアに耳をつけてみる。

「しゃ、ちょう!やめて…」
「嫌だ」

呆れた。何こんな時間に女性社員連れ込んでこんなことしてるんだ。だがどんな女性なのかはさすがに興味があったので、ドアノブを少し回して中を盗み見た。そして後悔した。
ヒロトさんは確かに連れ込んではいた。しかもかなり妥当な人物。問題はその相手。秘書のリュウジさんだった。
確かにリュウジさんは女性のように綺麗だ。でも2人は10年以上付き合いのある親友のはず。それがいつの間にこんな関係になっていたのだろうか。
リュウジさんの細く白い首筋にヒロトさんがちゅ、と小さくリップ音を立てながら唇を這わせている。男同士の行為のはずなのに、全く不快感はなくて、むしろ納得してしまうくらい、ヒロトさんにされるがままのリュウジさんは、美しかった。
そのままその行為を見ているわけにもいかないので、とりあえずドアを閉めようとしたときだった。

ヒロトさんが、こっちを見てる。

え、どうして?俺に隙なんてなかったはずだ。そしてヒロトさんは自分の肩にリュウジさんを抱き寄せると、唇に人差し指を当てた。

(このことは、黙っててね)

ジェスチャーだけで伝えると、リュウジさんの額にキスし始めたのでもう見ていられなくなってドアを閉めた。

その後、リュウジさんの首筋についていた赤い跡を見つけて再び俺が硬直するのはまた後日のこと。







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