プロジェクトA




「…だから、ヒロト聞いてる?」

ぼんやりしているところにいきなり視界に入る恋人の顔。これほどびっくりするもの、そして幸せなものはないと思う。

「うん、聞いてたよ」
「じゃあさっきまで俺が言ったこと30文字以内に要約して言ってみろ」
「ごめん、聞いてなかった」
「…やっぱりな」

少々呆れ顔の緑川は、肩をすくめた。ぼんやりしていたことに申し訳ないと思い、その内容を聞いてみた。

どうやら、秘密の誕生日プレゼント計画らしい。相手は瞳子姉さん。カレンダーを見てみると、その日付までおよそ1ヶ月。俺としたことが、すっかり忘れていた。

「で、俺とヒロトはプレゼント買いに行く係」
「あと1ヶ月もあるのに?」
「準備するのに早い方が怪しまれないだろう、って風介が」
「…なるほど」
「それに、お、俺とお前なら…」
「あぁ、デートに見せかけられるってこと」

緑川が言おうとしたことであろうことを代弁すると、みるみるうちに赤くなっていくその頬。最近あまり出かけていないからそのチャンスをくれた風介に感謝だ。

「で、いつ行こうか」
「俺はいつでもいいよ」
「じゃあ、これからは?」
「は?」

幸い今はまだ午前中。今から出かけても大丈夫なはず。

「…わかった」

火照った頬を扇ぎながら、待ち合わせの場所と時間を指定して、緑川は部屋を出て行った。
目的は違う、でも形はデートという設定に俺の胸は久しぶりに高鳴った。


出かける、とはいえデートであることに変わりはないんだから、と言って外で待ち合わせをして行くことにした。何でも形って大切だと思う。うん。
デートなんて久しぶり。いつもなんだかんだで忙しくてできなかったから。こんなチャンスをくれた姉さんにお礼を言わなくては。

「絶対に言うなよ?」
「どうして?」
「バレたら台無しだ」

緑川はプレゼントのことで頭がいっぱいらしいけど、俺はこの状況を楽しませてもらおうとしよう。

「よし、行こうか」
「うわっちょっと待て!」

手を繋いで引っ張った。
何でもかんでも、楽しんだもの勝ちだよね。







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