※高校生パロ














体温




ぽんぽん、と膝の上でボールが踊る。爪先で上げて、頭で弾いて、また膝へ戻る。

「なぁ南雲」

そんなことをしていたら、同じクラスの男子に声をかけられた。

「お前、どうしてサッカー部入らなかったんだよ」



高校は、園から近いところを受験した。サッカーの名門校に声をかけられていたにも関わらずわざわざそこを選んだのは、園のためでもあったりする。
だって間違いなく帰りは遅くなるし、寮に入ったとしてもものすごく心配されるのは目に見えていたから。
まぁヒロトほど頭がいいわけでもないから、自分に合ったところを大人しく受けた。

風介と、一緒に。

やっぱり普通の高校なだけあって、サッカー部のレベルは…うん、まぁそこは割愛しておく。
とにかく、その高校より俺たちの方が強かった。だから、部に入るのをやめて、ひたすら園で練習を重ねている。中学の頃のFFIのこともあるし、何か選抜試合とかあるときは呼んでもらえると思うし。そこらへんを風介に相談したら、奴も同じことを考えていたらしく、あっさりと決まった。


「ただいまー」

今日もいつも通りに帰宅、詰襟からジャージに着替え、外に出る。今は冬、吐く息は白い。風介や他の奴はまだ帰っていないらしく、いるのは俺1人。
そういえば、朝に先に帰っててくれって言われてたっけ。
とりあえず、必殺技の練習。なんとかして新しい技を生み出さないと、とひたすらボールを蹴る。
ゴールに入れて、それを取りに戻るの繰り返し。
そしてもう一度蹴ろうとしたときだった。

「何してるんだ晴矢」

急にかけられた声、後ろを振り向くと、そこにいたのは風介。

が、次の瞬間。

俺は見事にボールを空振り、勢い余ってそこにしりもちをつく。

「いってぇ…」

ぶつけたところをさすりながら風介を見ると、一生懸命に笑いをこらえていた。

「てめっ、笑うな!」
「何を言う。これは笑っているのではない、まだこらえている段階だ」
「結局笑ってんじゃねぇかっ!」

両頬をおもいっきりつねってやると、俺のもつねり返される。
そんな風介の頬は冷たい。普通の人より体温が低いせいもあり、触ると冷たい。

頬をつねるのをやめて、そっと両手を添える。急にそんな行動をとった俺に驚いたらしく、俺の手に風介の手が重なった。

「どうしたんだ急に」
「別に」
「晴矢の手は、温かいな」
「普通だろ」
「こんな冬なのに、温かいのはおかしい」
「だったらお前は、夏でも冷たいからおかしいんだな」
「うるさい」

俺の手をそっと自分の頬から離す。身体は冷たいはずなのに、風介の微笑んだ顔はなんとなくあたたかい。

「私は中に入るぞ」
「ちょっと待て、練習しないのか」
「まだ着替えていない。…それに、早くこたつの中でアイスが食べたいんだ」

颯爽と去って行くその背中を見て苦笑、そしてその背中を追いかけた。



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