学校に行ったら風丸におめでとう、って言うんだ。あとは好きだって言えたらいい。
そんなことを思ったのがいけなかったのか、次の日風邪をひいた。なんだこのお約束な展開。自分で自分にツッコミを入れたが、何のリアクションもできないので自分で自分を無視した。

何時間眠り続けていたのだろうか。目が覚めて時計を見ると、時刻は夕方6時。そろそろ部活の終わる時間だな…。と思いもう一度ベッドに寝転んだ。すると、ノック音。

「どうぞー」

瞳子さんか誰かだろうと思って安易に入室を許したのがいけなかった。
入ってきたのは本来ここにいるはずのない人間で。そう、風丸一郎太張本人だった。

「…よう」
「…うん」

たったそれだけの挨拶を交わし、あとは沈黙。お願いだから誰かこの空気をどうにかしてくれ。頭がぐるぐるしてきたタイミングで、風丸が沈黙を破った。

「身体、平気か?」
「え?う、うん」
「そうか、よかった」

そう言われた瞬間、ドキリとした。風丸が柔らかく微笑んだのだ。こんな風丸、見たことないかもしれない。言うなら今か、と思って、口を開いた。

「風丸、俺…」

言葉が切れたのは、風丸に口を塞がれたから。

「ごめん。俺に言わせてくれ」

え、それってどういうこと。口元から彼の手が離れても、俺の口から言葉は出てこなかった。

「俺、今日お前がいなくて落ち着かなくて。ずっとイライラして、ヒロトに指摘されてやっと気が付いた」

お互いの、視線がぶつかった。

「好きだ、緑川。お前が、好きだ」

俺の手に、風丸の手が重なる。指と指が、そっと、絡まる。

「全国大会で優勝できたら、付き合ってほしい」

そう言って、少しだけうつむいた。耳まで真っ赤になっていて、なんだかかわいい。

「うん」

絡まった指を、握り返した。その手は俺と同じくらい、熱かった。

END





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