そのイライラは部活中に爆発した。練習中にサッカー部の練習風景を見てみると、何故だか緑川がいなかった。それ以外は普段通りのサッカー部。その瞬間、自分の中で何かがプッツンと切れる音がした。

「ちょっ…。どうしたんですか!?」

サッカー部の方へ向かってズカズカと歩いていく。宮坂の制止も振り切って。

「おい!緑川はどうした!」

一番彼の身近であろうヒロトに尋ねる。聞かれた瞬間こそきょとんとしていたが、すぐにニヤリと笑みを浮かべた。

「…気になる?」
「そりゃあ」
「どうして?」

どうして?言われてみればどうしてなんだろう。緑川が気になって仕方がない。彼の姿が見たい。声が聞きたい。そしていつだって、笑っていてほしい。
そうか、俺はー。

「緑川なら風邪で休みだぞー」

その、何も知らないとぼけたような声の主は、通りすがりの円堂だった。俺とヒロトの間にあった妙な緊張感が一気に消えてなくなった。

「え、風邪?」
「そう、風邪」

ちょっと待て何だったんださっきまでの俺の思考は!今すぐ頭を殴りたくなる。まんまとヒロトに振り回されてしまった。なんと情けない。当のヒロトといえば、相変わらずニヤニヤしっぱなしだ。

「それならいいんだ、戻る」

陸上部の元の練習に戻ろうとした、その時だった。

「風丸くん、緑川のお見舞い、行かない?」

それは、相変わらずの澄ました顔をしたヤツから発せられた。





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