「お、緑川」
「風丸…」

今日も何とか無事に部活を終え、いつも一緒に帰るヒロトや大夢等、お日さま園の連中を一足早く待っていると、風丸が来た。いつも円堂と一緒に帰っているから、円堂待ちだろう。
それから何を話していたかなんて覚えていない。とにかくその場をもたせることに必死だった。もたせた自分を褒めてやりたいとさえ思う。

「そういえば最近、あんまり緑川と話してなかったよな」

その風丸の一言で俺のマシンガントーク(だったかもしれない)は一瞬で止まった。

「だから今日、久しぶりに話せてよかった!」

ニコッと笑うその顔を見て、こっちまで笑顔になってしまう。恋愛というものは恐ろしい。

「風丸ー!…に、緑川?」

その時遠くから聞こえてきたのは円堂の声。あ、ヒロトも一緒だ。ダッシュで俺たちのところへやってきて、

「悪い!待たせた!」

と風丸に手を合わせた。

「大丈夫だ、緑川と話してたし。な?」
「お、おう…」

お日さま園と円堂&風丸の家の方向は真逆。校門でそのまま別れることとなった。

「風丸くんと何話してたの?」
「えーっと、世間話?」

突然ヒロトに聞かれてお茶を濁すはめになったが、覚えていないんだから仕方ない。一体何を話していたんだろう、俺は。

「そういえば、明日試合らしいよね、陸上部」

ヒロトがふと、そんなことを漏らした。そうか、だから今日練習軽めだったのか。そこでやっぱり部活中も彼を見ていたことに気が付いて頭が痛くなる。

「風丸くん、全国大会まで行ってほしいよね」
「うん…」

適当に相槌を打っておいた。



「うーん…」

学校で大夢に「百面相」と言われたが、今まさしくその顔をしているかもしれない。もっとも、相手は大夢ではなく携帯だが。
ベッドに寝転がってその画面を見つめてみる。そこには、「明日、頑張って」の文字。明日試合ということで、応援しようと思って何とか作り上げた言葉。ここまでできた自分がすごいと思う。
だが、未だ送信ボタンが押せずにいる。

「うー…」

ごろんごろんとベッドで転がって、ついに覚悟を決めた。液晶のメールが飛んでいく画面に切り替わったあと、「送信完了」の文字。
返事が来るのがなんとなく怖くて、マナーモードに設定し、すぐに眠りについた。





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